107 Hypholoma candolleana Psathyrella

107-  Hypholoma candolleanus   《1893年8月10日  描き直す》

解釈: Psathyrella candolleana (Fr. : Fr.) Maire

仏名:Hypholome de De Candolle【De Candolle氏のナヨタケの意】

【和名:イタチタケ、Psathyra 亜属、ナヨタケ属】

 

      通常このキノコの傘はすぐ平らになるのだが、それでもファ-ブルの同定は正確であると思う。特に注目すべきは、傘の縁に被膜の名残りが垂れ下がり、柄は曲がり、中空、ひだは灰色がかっていることである。

      イタチタケは春から秋まで広葉樹の切株上か側、林道の傾斜面、また他のかなり湿気の多い所に束生する。

      傘は初め鐘形すぐ平らになり、乾燥時にはほとんど真っ白であるが、湿気が多いと黄土色がかった褐色(図版のいくつかのキノコは特に濃い色である)。ひだはリラ色がかった灰色からチョコレ-ト褐色に変わる(胞子紋は濃褐色)。柄は長く、ほっそりして壊れやすく、中空、白色、ひだに接する部分には条線がある。肉は薄く白色、食用としての価値はない。

      イタチタケは Psathyra 亜属に属する、傘がほとんど平らのまんじゅう形のキノコである。同じ亜属の Psathyrella leucotephra (Berk. & Br.) Orton 【白色と灰汁色のナヨタケの意】はひだはもっと灰色で、柄には消えやすいつばがあるので識別される。Psathyrella pygmea (Bull. : Fr.) Sing. 【ピグミ-のような小型のナヨタケの意】は以上の二つの種が小型化したようなキノコである。生育は局地的で、朽ち木の上に束生する。

 

108 Hypholoma fasciculare

108-  Hypholoma fasciculare Huds.

解釈: Hypholoma fasciculare (Huds. : Fr.) Kummer

異名: Naematoloma fasciculare (Huds. : Fr.) Karst.

仏名:Hypholome en touffe【束生のクリタケの意】

【和名:ニガクリタケ、クリタケ属】

 

      傘の色や若い子実体の傘の下に淡い黄色の被膜が残っているといった特徴から、ファ-ブルの同定は正確だと思う。

      ニガクリタケの傘は、ふつう長い間まんじゅう形、硫黄色、中心部はオレンジ色。縁部には被膜の名残りがある(図版にはそれは見えない)。柄はしばしば曲り、硫黄色だが下部の方からだんだん褐色になっていく。さらに柄にはつば状のゾ-ンが見られるが、それは成熟した胞子の落下によるコルチナの名残りであることが明らかである。ひだは直生でとても密、最初は硫黄色のちオリ-ブ色がかった緑色、やがてチョコレ-ト褐色になる。傘の肉は黄色、柄の部分は褐色がかる。

      ニガクリタケは広葉樹や針葉樹の切株にぎっしりと束生し、一年中見られるありふれたキノコであるが、食べると中毒を起こす【日本では死亡事故が知られている】。

 

 

109 Hypholoma fasciculare

109-  Hypholoma fasciculare     《1892年10月》

解釈:Hypholoma fasciculare (Huds. : Fr.) Kummer

仏名:Hypholome en touffe

【和名:ニガクリタケ、クリタケ属】

 

      この図版のニガクリタケは前図のものより成熟した子実体で、三本の大きなキノコのひだは濃い色である。傘の縁は所どころ裂け、おそらく乾燥時に採集されたものだと思われる。

        Hypholoma capnoides (Fr. : Fr.) Kummer は針葉樹の切株に発生し、局地的に一年中見られる。ひだは最初白色、のち灰色がかったリラ色といった特徴から、有毒のニガクリタケやクリタケとはっきり識別できる。クリタケ(H. sublateritium)は傘は黄土色、中心部はれんが赤色、ひだはオリーブ褐色である。

      Hypholoma marginatum Pers. : Fr.) Schroet.【アシボソクリタケ】は小型の赤褐色のキノコで、柄には白っぽい光沢のある繊維が褐色の地にまだらに見られる。針葉樹の落葉層に群生する。

 

110 Hypholoma sublateritium

110-  Hypholoma sublateritium  《サランシュ、1889年9月29日》

解釈: Hypholoma sublateritium (Fr.) Quél. 【れんが色のクリタケの意】

【和名:クリタケ、クリタケ属】

 

      傘の色と縁部に残る被膜からファ-ブルの同定が正確だということがわかる。しかし柄が基部で急に細くなっているのは、あまりこの種の代表的な特徴とは言えない。サランシュから送られてきたこれらのキノコは、柄がかなり褐色であり、採集されてから大分時間が経っていることがわかる。しかし、傘はあまり開いておらず、ひだもまだ明るい色合いなので、若いうちに採集されたものだと思われる。

      クリタケは、傘がまんじゅう形のち平らなまんじゅう形、縁には被膜の名残が見られる。中心部は典型的なれんが赤色、縁部は黄土色。柄はかなり頑丈で曲り、上部は黄色、下部に向かって黄土色がかった褐色~赤褐色、ひだの近くにはつば状のコルチナを持つ。ひだは直生、密、黄色のちオリーブ褐色。傘の肉はかなり厚く淡い黄色で、柄の肉は赤っぽい。

      夏や秋に広葉樹の切株に束生する。ニガクリタケより稀なキノコだが、これもまた中毒を起こすキノコである。

 

111 Hypholoma sublateritium

111-  Hypholoma sublateritium Schaeff.      《1886年11月7日》

解釈: Hypholoma sublateritium (Fr.) Quél.

【和名:クリタケ、クリタケ属】

 

      この図版の二本は前図のものと違って,採集したばかりのキノコようである。しかし、傘の色や大きなキノコの縁はあまりにも波打ち、そして柄の下部が白色なのはこの種の特徴としては珍しいことである。それ以外は、ひだの色や柄が中空なので、ファ-ブルの同定は正確だと思う。おそらく図版のキノコは、ぎっしり詰まった一束の真ん中のものを引き抜いて描いたと思われる。

 

112 Hypholoma lacrymabunda

112-  Hppholoma lacrymabunda - Lacrymaria lacrymabunda Bull. 

    《1886年6月8日。イチジクの木の根元。イエール島》

解釈: 不確か Psathyrella lacrymabunda (Bull. : Fr.) Moser ? 【涙を流すナヨタケの意】

異名: Lacrymaria velutina (Pers. : Fr.) Konrad & Maubl.

仏名: Lacrymaire velouté 【ビロード状のナヨタケの意】

【和名:ムジナタケ、ナヨタケ属】

 

      ムジナタケとする解釈には疑問が残る。それは、傘には綿毛状の微繊維が見られず、縁部にも被膜の名残りがなく、さらに、微繊維状鱗片のある柄の表面には胞子による染みがない。

      ムジナタケは未開墾地、道についた轍の深い跡、放置された庭や草の生えている林道などに、極めて頻繁に見られる種である。春には最初のキノコが、そして最 後のものは晩秋に見られ、ことに夏の雨の後にはしばしば大量の発生がある。食用キノコで、林地の切り枝などに、時には豊富に生えることがある。

      ムジナタケは、傘は大きな中高でのち平らとなり、黄土褐色~淡黄褐色で綿毛状の微繊維におおわれ、縁部には被膜の名残りが垂れ下がる。柄の表面は最初白 色、のち下部は傘と同じ色になり、つば状のゾーンの下は微繊維状の鱗片におおわれ、そこに胞子が付着して黒っぽくなる。ひだは密、褐色~黒色で、涙のよう な小さな水滴が流れる(ラテン名 Lacrymaria の由来)。

      近種の Psathyrella pyrrhotrica (Holmsk. : Fr.) Moser は傘が鮮やかなオレンジ色で針葉樹に関係の深いキノコである。