01 Amanita echinocephala 4 thumb1- Amanita echinocephala  《1893年5月21日描きなおす》
解釈: Amanita echinocephala (Vitt.) Quél.
【和名: シロオニタケの仲間、(テングタケ属)】


 この図版では、傘のイボは先端の尖ったピラミッド形で、奇術師が使うくぎ板のように密で、キノコ全体はうす色、つぼはいくつかの環状となって残り、つばがある大型のキノコで、傘の縁部には条線がないなどは、基準種 Amanita echinocephala の亜属である Aspidella [= Lepidella] Gilbert(1925年)【マツカサモドキ亜属】を同定するための重要な特徴である。Amanita echinocephala はふつう石灰質の土壌に生えるが、この図版には、ファ-ブルはまったく場所、日時、土壌および環境の採集条件の記載をしていない。また、このキノコの近縁には Amanita Vittadini (Moretti) Vitt. という、南国に生える柄が燐片で覆われている大型の種類がある。


 

02 Amanita caesarea thub

03 Amanita caesarea thumb

2-3  Amanita caesarea  《1890年9月26日》
解釈: Amanita caesarea (Scop. : Fr.) Pers.
仏名:Oronge, Amanite des Césars 【オレンジ、皇帝カエサル (称号)のテングタケの意】
【和名:なし、タマゴタケ に近い種、(テングタケ属)


 この大きくて美しいキノコはテングタケ属の基準種である。それは傘が柄から簡単に離れ、つばやつぼがあり、胞子紋はほとんど白色。本属は外被膜(「タマゴ」)が子実体の成長によって細かく壊れる。例えば、上部は傘からはずれるか、あるいは細かく壊れて色々な形で残る。下部はつぼとなって柄の基部を多少とも包むかあるいは縮んで環状にしか残らない。ひだを覆う内被膜は傘の縁部から離れてつばになる。このつばは柄の上部に付くか、時には「孵化」したとたんに全く消えてしまうものもある。

 このシ-ザーのテングタケという名前は、このキノコがローマ皇帝の洗練された食卓にふさわしいと判断されて付けられたものです。南国の種類なので、パリ辺りでは暑い夏にしか見られない。料理におけるその価値は世界中に知られ、傘が直径8~15cmの大型キノコなので、グルメに喜ばれている。
傘の色はオレンジがかった赤で、ふつうイボはなく、ひだと柄は黄色、これだけでほとんど A. muscaria 【ベニテングタケ】と混同することはない。中毒を起こすベニテングタケは、傘はなるほど赤色だが、ふつうイボに覆われ(しかしときには雨に洗らわれて見当たらないこともある!)、特にひだと柄は白色である。


04 Amanita solitaria mappa thumb

05 Amanita solitaria thumb


4 - Amanita solitaria Bull.     《1886年10月31日》

5 - Amanita solitaria Bull.    《1892年05月28に日描き直す》
解釈:難しく、不確か
【和名: なし、マツカサモドキ  に近い種(テングタケ属)

 

      実際、傘のイボの様子からして、Amanita solitaria (Bull.: Fr.) Kummer 1871年  と同定できる保証はない。なぜなら  Amanita solitaria のイボは大小の破片状であるからです。

      以前から、風姿の異なる数種のキノコが混同されて、この Amanita solitaria の名前で、呼ばれてきました。小さなイボがきちんと並んでいるこの図のキノコは、Amanita solitaria のグル-プに属する南国の Amanita strobiliformis (Vitt. 1835年)との判断が可能だと思われる。

      しかし、ゆるやかに柄を包んでいるつぼが在ることで、この2枚の図版から、Amanita solitaria  に近い種と同定することは難しい。たぶんこれは、南国系の白くて頑丈なキノコで、はっきりとつぼが確認できることから、少なくとも Amanita ovoidea  という珍しいグル-プに属するのではないかと思われる。

 


 

 

06Amanita leïocephala DC 17 7bre 1891 Planche n°5

6-Amanita leiocephala    《1891年9月17日》
解釈:不確か  Amanita curtipes
ss. Gilbert
【和名:なし
(テングタケ属、フクロツルタケ節、シロテングタケ  に近い種)

      ファ-ブルはこのキノコの名前を、どの著作に依ったのか明らかにしていないが、私達の考えでは、これは  Amanita leiocephala Barla  現在は  Amanita curtipes Gilbert  だろうと思われる。柄は丈夫で比較的短く、つばはとても脆く痕跡がない、つぼはゆるやかな袋状、ひだは桃色がかっているなどが、この最新の命名を堅固にしてくれるでしょう。この南国のテングタケは珍しいと言われている。




 

07 Amanita muscaria Linn Planche n°6

7-Amanita muscaria Linn.
解釈:不確か  Amanita muscaria
(L.: Fr.) Hook var. aureola Kalch.?
仏名: Fausse-oronge, Amanite tue-mouches 【偽タマゴタケ、蝿殺しテングタケの意】
【和名:ベニテングタケ の変種?
(テングタケ属)

      この素晴らしく大きなキノコ(傘の直径は優に15-20cmに達する)は、赤い傘の上にたいていクリ-ム色がかった白い燐片を散らしており、ひだと柄は白 色で、つぼは基部で輪状に縮小していることから、私達の地方では、他のテングタケ属の種類と混同することは全く有り得ない。

      典型的な  ベニテングタケ  には袋状のつぼがないが、ファ-ブルの水彩画にはいつも追加的な要素があって、Amanita caesarea  がなかなか《孵化》することができない。したがって、この図は、おそらく  Amanita muscaria var. aureola Kalch. (1873年)であろうと思われる。このキノコを採集する時はとくにひだと柄の色に注意しないと  A. caesarea  と混同する恐れがある。

      ベニテングタケ  はむしろ北方のキノコで、シラカバなどや針葉樹の根と共生し、秋にはたくさん発生して森を楽しく飾ってくれる。

      このキノコを食用とすることは、体力のある人だと死ぬことはないにしても、不快な中毒症状を引き起す。また、傘の被膜には僅かに幻覚を誘発する物質が含まれており、シベリアの一部の民族の間で利用されていた。


 

08 Amanita ovoidea Planche n°7

8 -Amanita ovoidea  【ファ-ブルの手書きではない記載がラベルにある】
解釈:Amanita ovoidea 
(Bull. : Fr.) Link.
仏名: Oronge blanche 【白色のタマゴタケ の意】

【和名:シロタマゴタケ(テングタケ属)】

      この大きな白くて頑丈なキノコは(傘の直径が楽に15cm  あるいはそれ以上)、通常その袋状のつぼは多少とも濃褐色の色合を帯びている。

      とても暑い夏には、この美しい南国のテングタケは、パリの緯度くらいまで上ってくることがある。採集者は誘惑に任せて取る前、本当に、猛毒の Amanita phalloides 【タマゴテングタケ】のグル-プである白色のテングタケ属ではないことを確認しなければならない


 

09 Amanita pantherina DC 8 mars 1893 Planche n°8

9-Amanita pantherina  D. C.   《1893年3月8日》
解釈: Amanita pantherina 
(De Cand. : Fr.) Krombh.
仏名: Amanite-panthère 【豹テングタケ  の意】
【和名:テングタケ  (テングタケ属)】

      この水彩画のなかで、傘が褐色の3本のキノコが、ふつうのテングタケの様子をしている。いぼは《乳の滴》状で白色で大体平均して点在し、傘の外縁は溝線があり、つばの表面は滑らかである(ファーブルの図版のは、たるみであって溝線ではない)、柄は比較的短くて狭い袋状のつぼを持つ。このつぼは柄にたいしてほぼ水平にはっきりと裂開し、更にその上には、いくつかの環状のつぼの名残が螺旋状にみられる。

      つばの表面とつぼの二つは、テングタケを間違いなく同定するためにとても重要な特徴です。しかし、イボの形や傘の縁部の溝線は二次的な要因でしかありません。なぜなら Amanita pantherina var. abietum 【モミの木のテングタケの意】(Gilbert) Konrad & Maublanc (1930年)は、まさに傘は滑らかで、いぼは平らで灰色がかっている。

      図版のAmanita vaginata var. plumbea 【ツルタケの変種】の残り一本の灰色のキノコは、テングタケにしては珍しいので、ファ-ブルがこれを描いたのがうなずける。【plumbea =鉛色の意】

      テングタケはありふれたキノコで、かなり強い毒性を有する。食べてから比較的短時間に中毒症状が表われる。タマゴテングタケのグループほど猛毒ではないが、しかしいくつかの死亡例が知られている。


 

10 Amanita phalloïdes Refait Juillet 1892

10-  Amanita phalloides        《1892年7月描き直す》
解釈: Amanita  phalloides
(Fr.)Link
仏名: Amanite phalloïde, Oronge-ciguë  【ciguë = ドクニンジンのような猛毒】
【和名:タマゴテングタケ(テングタケ属)】

      このキノコはいたるところに見られ、採集者はその特徴をかならず知らなければなりません。傘の色は黄色から緑を経て褐色までの間で、全体にオリ-ブがかった色合を持つ。表面は絹のような細かい放射状微繊維に覆われる。つばは永続性、柄は基部で球根状となり多少ともゆるやかな袋状のつぼをもつ。採集にあたっては、タマゴテングタケとの混同を避けるために、つぼがあるかどうかを確かめながら、柄の基部を丁寧に掘り出し、注意深くキノコ全体を採集しなければならない。

      フランスでは、キノコ中毒による死亡例の90%近くがタマゴテングタケによるものである。最初の中毒症状(胃と腸の痛み)は食後24-48時間くらいに表われる。この症状の出遅れがキノコに起因するという正確な診断を困難にし、適切な治療をうけることができない。有効な治療なしでは患者は10日間くらい苦しんで死にいたる。致死量は体重 60-70 kg の大人で  50 g の新鮮なキノコ(タマゴテングタケの傘一つ分)です。子供の場合はもちろん少なくなって、10 ~ 20 g 。もちろんこの数字は個人差があり、その時の身体の状態やそのキノコに含まれる毒素の多少により異なる。いずれにしても、100 ~ 120°C で煮てもタマゴテングタケの中毒物質は壊れない。最近では、肝臓が再起不能になる前に、早期に中毒治療センタ-で有効な治療を受けると、たぶんこのおぞましい死は免れるかも知れません。

      あれほど何冊もの一般向けの本に、タマゴテングタケは危険であると、しつこく警告しているにもかかわらず、今日でも、多くの人が軽率にタマゴテングタケの《美味しい》料理を食べて、中毒死するのには唖然とします。

      しかしながら、誤って傘か柄の一部を食べたり、味の検査(苦さや辛さ)のために飲み込んだとしても、それが致死量の20分の1ぐらいならば危険ではない。




11 Amanita vaginata 6 mars 1893 Planche n°18

 

12 Amanita vaginata, 31 mai 1894 Planche n°19

11-   Amanita vaginata         《1893年3月6日》

12-   Amanita vaginata         《1894年3月31日》
解釈:不確か Amanita vaginata
(Bull. : Fr.) Vitt. var.plumbea Schaeff. : Fr. ? 【plumbea=鉛色】
仏名: Grisette, Amanite à étui 【灰色娘、袋テングタケの意】
【和名:ツルタケの変種】

      このキノコは、 Forquignon氏(1888年)の Subgen. Vaginaria = Roze氏(1888年)の Subgen. Amanitopsis 【ツルタケ亜属】の一種です。傘の外縁は長い溝線があり、柄はほとんど円筒型で基部は球根状でなく、永続性の袋状のつぼがある。つばはとても消え易いので成長の初期に消滅する。

        この亜属は判別は簡単ですが、種の確実な同定は簡単ではない。この図版のキノコは比較的頑丈で、傘は灰色、円錐形よりもむしろ半球形に近い。つぼはツルタケ亜属にしては短すぎる。柄には燐片がないので、 A. vaginata var. plumbea だと思われる。この plumbea はしばしばツルタケ亜属の代表とされている。


 

 

13 Amanita vaginata 2 juin 1891 Refait 25 mars 1893 Planche n°16

13-      Amanita vaginata var. nivea        《1891年6月2日》

 解釈:不確か Amanita vaginata (Bull. : Fr.) Vitt. var. nivalis Grev. ? 【雪色ツルタケ の意】

【和名:なし(ツルタケ  の変種)】

      このキノコもまたツルタケ亜属の一種で、傘の外縁は長い溝線があり、柄は円筒形で、つばはなく、鞘状のつぼがある。

      この図版では傘の中心部が淡い褐色なので Amanita vaginata var. alba (De Seynes 氏,1863年)【シロツルタケ】ではなく、キノコ全体(傘の中心部も)が白色の A. vaginata var. nivalis (Greville 氏)だと思われる。しかし、この二つの白いキノコを別種とすることは、みんなが認めているわけではない。


14_Amanita_verna14-    Amanita verna      《1889年5月20日》

 

15 Amanita verna, Refait 17 août 1893

15-  Amanita verna    《1893年4月17日描き直す》

解釈: Amanita verna (Bull. : Fr.) Lamk.

仏名: Amanite printanière 【春テングタケ  の意】

【和名:シロタマゴテングタケ  (テングタケ属)】

      このキノコは  タマゴテングタケ  のグル-プで、春テングタケというのに秋にも出ます。このグル-プには少なくとも判別が難しい白い三つの種類があって、そのどれもがタマゴテングタケと同じく中毒や死を招く(10番の図版を参照):

    ー Amanita phalloides (Fr.) Link var. alba (Vitt.) Gilbert 【タマゴテングタケの白い変種】は全体が白色で、タマゴテングタケのように傘には絹のような放射状微繊維がある。

    - Amanita virosa Lamk. 【ドクツルタケ】も全体が白色で、つばより下の柄は粘性の微細綿毛に覆われる。

    - この図版の Amanita verna (Bull. : Fr.) Lamk. 【シロタマゴテングタケ】は、つばの下の柄は平滑、傘の中央にはときには薄いベ-ジュ色がかかることがある。

      しかし、実際には採集時にそれらの種をはっきり判別することは難しい。そこで、水酸化ナトリウム水溶液(あるいは水酸化カリウム)が役立つ:この試薬は A. phalloides var. alba には色が付かないが、ドクツルタケの傘の表面にはきれいな黄色が表われる。シロタマゴテングタケの場合は微妙で、大陸性気候の地域では傘の表面は黄色になるが、地中海性気候あるいは大西洋気候下では全く色が変わらないと言われている(ファ-ブルのこのキノコはおそらくこの例に当たるでしょう)。試薬によるこの二つの違いは、生態的環境の違いによる同種のものか、あるいは全く別の種類なのか問題は残されている。

    従って、この恐ろしい混同を避けるためには、すべての白色のテングタケは食用にしないほうが賢明であろう。