197 Tricholoma sordidum Lepista saeva

197-  Tricholoma sordidum    《リユベロン地方のボニイュ辺り、1892年1月1日》

解釈: Lepista saeva (Fr.) Orton

異名: Lepista personata (Fr. : Fr.) Cke. ss. auct.Rhodopaxillus saevus (Fr.) Maire

【和名:オオムラサキシメジ、ムラサキシメジ属】

      ファ-ブルはこのキノコを Tricholoma sordidum と同定したが、当時は Lepista 属【ムラサキシメジ属】は存在せず、Tricholoma 属【キシメジ属】だけであった。現在は Lepista sordida (Schum. : Fr.) Sing. 【コムラサキシメジ】と呼ばれる。しかし図版のキノコはコムラサキシメジにしては頑丈で、肉も厚くまた色合いも異なるところから、むしろ Lepista saeva (Fr.) Orton 【オオムラサキシメジ】ではないかと思われる。

      L. saeva はがっしりとしたキノコで、傘は径5~15cm、まんじゅう形のち不規則な平らに開き、しばしば中心部はくぼみ、平滑、カフェオレ色、淡褐色、淡黄褐色である。ひだは密、湾生、類白色~クリーム色やがて桃色がかったベージュ色。柄は太く頑丈で、3~10×1~4cm,繊維状のささくれや、紫色、アメジスト紫色あるいはラベンダー色の縦のしわが見られ、上部はもっと淡い色合いである。肉は白色~僅かにリラ色がかり、味にくせがなく、独特の香りがある。美味しいキノコとして知られており、晩秋~1月、林縁、草地、芝生などに発生する。

      図版のキノコはこの種の持つ典型的な大きさや色合をしている。断面図からは傘の肉の厚さや白色がうかがわれ、ひだはあまり広くなく、通常もっと湾生である。また柄の肉には紫の色調が見られない。

 


 

198 Tricholoma nudum Lepista nuda

198 -  Tricholoma nudum Bull.      《1886年10月17日》

解釈: Lepista nuda (Bull. : Fr.) Cke.

仏名: PIED  BLEU,TRICHOLOME  NU 【青い足、裸シメジの意】

【和名:ムラサキシメジ、ムラサキシメジ属】

 

      図版のキノコは傘の中心部が褐色で、縁部は内に巻き、ひだは傘と同色といった特徴から Lepista nuda (Bull. : Fr.) Cke. 【ムラサキシメジ】だと思われるが、しかしキノコ全体が少し青っぽく、ほっそりとしすぎている。

      通常 L. nuda は肉質の頑丈なキノコで、全体はリラ青色~リラ紫色、乾くとだんだん傘の中心部から褐色をおびてくる。肉は帯紫白色、特徴的な良い香りがあるが、時には僅かに松脂またはビタミンBの臭いがある。

      シ-ズンの終りを告げるこの種は、一般のキノコ類よりおそく晩秋に、広葉樹や針葉樹の林内にしばしば大きな菌輪を作って発生する。食用になるが、食味的評価は発生場所や個人の嗜好によってかなり異なるキノコである。

      美味なキノコのムラサキシメジ属には以下の近種がある:

  - L. irina (Fr.) Bigelow 【ハタシメジ】と L. glaucocana (Bres.) Sing. の傘は白っぽく,香水のような香りがある。

  - L. saeva 【オオムラサキシミジ】の柄にはアメジスト紫色のしわがある(図版197参照)。

  - L. panaeolus (Fr.) P. Karst. の傘は、ベージュ色の地に黒灰褐色のしみが見られる。牧草地に発生する。

      L. nuda は、野生のキノコの中ではかなり早期の1898年に Costantin と Matruchot によって、初めてブナの枯葉のコンポスト上に栽培されたが、現在でも未だ商業化には至っておらず、なお研究中である。

 


 

199 Trcholoma nudum Lepista nuda

199 - Tricholoma nudum       《1886年10月17日、1891年7月描き直す》

解釈: Lepista nuda (Bull. : Fr.) Cke.

【和名:ムラサキシメジ、ムラサキシメジ属】

 

      ファ-ブルが記しているように、この図版のキノコは前図と同じ採集だが、5年後に描き直した水彩画である。

      Lepista nuda の傘は径4~10cm,最初まんじゅう形のち平らに開き、時には中心が凹む。表面は最初美しい紫色だがだんだんに黄土色~黄褐色になり、ついには汚褐色~赤褐色となる。ひだは密、初め鮮紫色のち淡紫色~リラ灰色、やがて粘土色や赤褐色になる。柄は多少とも太く、2~12×1~3.5cm,しばしば短く、表面は淡紫色あるいはリラ灰色、しだいに色があせ、繊維状で白い縦すじが見られる。美味なキノコとして愛好者も多く、果物かアニスの香りがするが、時にはむかつくような悪臭のこともある。

            秋~冬、時には春まで広針葉樹の林内、公園、庭園、などのいたる所に見られるキノコである。

            図版のキノコは普通のものより肉が薄く、ことに成熟した子実体の色は少し濃すぎ、また断面図の肉も少し白っぽすぎるように思われる。

 


 

200 Trcholoma nudum Lepista nuda

200 - Tricholoma nudum  《1893年6月10日描き直す》

解釈: Lepista nuda (Bull. : Fr.) Cke.

【和名:ムラサキシメジ、ムラサキシメジ属】

      ファ-ブルはこの図版では、紫色のほとんど見られない一群のムラサキシメジを描いている。成熟した子実体ではこのような色合もたまに見ることはあるが、若い子実体では異例である。その上、若いキノコの傘は円錐形で、柄は細すぎて不思議な外観を呈している。

      断面図にはS字のような曲線のひだが描かれており、湾生で淡いリラ桃色であるところから、やはり図版のキノコはムラサキシメジ群に属する種だといえよう。

 


 

201 Trcholoma nudum Lepista nuda

201- Tricholoma nudum   《1891年11月20日》

解釈: Lepista nuda (Bull. : Fr.) Cke.

【和名:ムラサキシメジ、ムラサキシメジ属】

      図版の三本のキノコは成熟した子実体で、当初の傘の青色は消失して褐色し始めている。傘全体が褐色に変わってしまっても、ひだがまだリラ青色のままであるのはよくあることで、いずれはこのひだも汚淡褐色になる。図版に見られるように、古いキノコの傘の中心部は凹み、縁部は波打っている。通常柄の基部には淡紫色の綿毛状の菌糸がしばしば基物の枯葉か松葉に絡み付いているが、ファ-ブルの図版にはそれは見られない。

 


 

202 Tricholoma aggregatum Lyophyllum decastes

202 -  Tricholoma aggregatum      《1892年11月23日》

解釈: Lyophyllum decastes (Fr. : Fr.) Sing.

異名: Lyophyllum aggregatum (Schaeff.) Kühn.

【和名: ハタケシメジ、シメジ属】

      Lyophyllum decastes (Fr. : Fr.) Sing. 【ハタケシメジ】の傘は径4~10cm,肉質で弾力性があり、表面は褐色だが時には濃褐色、乾燥時には水分の蒸発による褪色と透明度の消失によって白っぽくなる。ひだは密、幅広く、類白色、時にクリーム黄色。柄は5~20×1~3cm、中実、軟骨状~弾力性があり、表面は帯白灰色。肉は類白色、辛くなく、僅かに小麦粉臭あるいは無臭。夏の終りごろ~12月、広針葉樹の林内に発生する。食用で美味なキノコといわれている。

      図版のキノコは少しほっそりしすぎているが、この種はしばしば柄の基部に多数の子実体が群がって束生(aggregatum の学名の由来)することから、簡単に見分けることができる。傘は放射状の微繊維におおわれ、柄は時には偏在し、僅かに縦の繊維状、下部は時には細く、肉は白色、といった特徴をファ-ブルは図版によく表わしている。


 

203 Tricholoma decastes Lyophyllum

203 -  Tricholoma decastes      《1891年5月18日描き直す》

解釈: Lyophyllum decastes (Fr. : Fr.) Sing.

【和名:ハタケシメジ、シメジ属】

      この図版のキノコは凄じく大きな株で発生し、傘は灰色、ひだは白色、柄は白色、株の根元には多数の《原始体》つまり生まれたばかりの幼いキノコが見られる。L. decastes の傘の色が、図版のような帯緑灰色であるのはかなり珍しいことである。


 

204 Tricholoma melaleucum Melanoleuca vulgaris

204 -  Tricholoma melaleucum       《1892年11月20日》

解釈: Melanoleuca vulgaris (Pat.) Pat. ?

異名: Melanoleuca melaleuca (Pers. : Fr.) Murr. 【melaleuca =黒と白】

【和名:コザラミノシメジ、ザラミノシメジ属】

      Melanoleuca vulgaris (Pat.) Pat.【コザラミノシメジ】の傘は径3~12cm、最初まんじゅう形のち平ら、中央部のくぼみにはゆるやかな突起が見られる。表面は光沢があり、褐色~黄土褐色の単一色、時には中心部が黒色あるいは類白色。ひだは密、幅広く、直生-湾生、白色。柄は3~9×0.3~1.2cm、細長く、下部はわずかにふくらみ、表面は上部あたりは帯白色、下部は縦の暗褐色繊維状の条線がある。肉はかなり薄く、白色でやがて柄の下部が濃褐色に変わる。

      5月~11月、広葉樹の林内や日当たりの良い草地に普通に見られるキノコで、味にくせがなく、ほとんど無臭、食用になる。

      ファ-ブルが採集したキノコは成熟した子実体で、傘の表面は濃いすす褐色、傘縁は薄く、平滑、反転している。通常この種の柄は傘の径より長く、下部はこれほどふくらんでいない。顕微鏡による検査なしには正確な種の見極めは難しく、近種の M. humilis (Pers.: Fr.) Pat.や M. brevipes (Bull.) Pat. や M. arcuata (Bull. : Fr.) Sing. または M. graminicola (Vel.) Kühn. & Maire と混同する可能性が大きい。


205 Tricholoma melaleucum Melanoleuca vulgaris

205 - Tricholoma melaleucum      《1888年12月25日》

解釈: Melanoleuca vulgaris (Pat.) Pat. ?

【和名: コザラミノシメジ、ザラミノシメジ属】

      前図に比べるとこの図版のキノコはかなり淡い色合いであり、断面図に見られるように、肉は傘部では白色、柄の下部では褐色といったコントラストは、Melanoleuca vulgaris の典型的な特徴を少々有していると言えよう。乾燥した気候のもとで採集されたファ-ブルのキノコは、かなり淡い色合いだが、中心部の肉は厚いので元の色が残っている。

      Melanoleuca 属 【ザラミノシメジ属】の種どうしはお互いに似かよっているので判別がむずかしく、図版のキノコは M. vulgaris にきわめて近いが、もしかしたら別の種であるかも知れない。


 

206 Tricholoma conglobatum Lyophyllum decastes

206 -  Tricholoma conglobatum      《1892年11月10日》

解釈: Lyophyllum decastes (Fr.: Fr.) Sing.

【和名: ハタケシメジ、シメジ属】

      この図版でも図版203と同様りっぱな太い株のキノコが描かれており、ファ-ブルは Tricholoma conglobatum  と同定している。この学名は現在では使用されず、Lyophyllum fumosum (Pers.: Fr.) Orton 【シャカシメジ、一名  センボンシメジ】となる。この種の傘は径3~10cm、平滑、初めまんじゅう形、のち変形するか、でこぼこになり、やがて中央部が凹み、表面は淡灰色、灰褐色、灰黄土色、縁部はしばしば内に巻く。ひだは密、直生-湾生、淡灰色。柄は4~10×0.5~1.2cm、弾力性に富み、条線があり、表面は白灰色。肉は厚く、緻密、やや苦く、挽き立ての小麦粉の臭いがある。広葉樹や針葉樹の林内に多数が太い株状に発生する。とても美味なキノコだと言われている。

      ファ-ブルは大株で成熟したキノコを描いているが、Lyophyllum fumosum にしてはひだが少し白っぽすぎる。それに通常柄は太短いが、ここでは細すぎ、条線も見えず、白色すぎる。従って図版のキノコはL. fumosum よりむしろ L. decastes 【ハタケシメジ】だと思われる【図版202、203を参照】。


 

207 Tricholoma acerbum

207 - Tricholoma acerbum      《1889年11月20日》

解釈: Tricholoma acerbum (Bull.: Fr.) Quél. 【acerbum =渋い】

【和名: オオニガシメジ、キシメジ属】

      Tricholoma acerbum (Bull.: Fr.) Quél.【オオニガシメジ】の傘は径6~12cm,まんじゅう形のち平らに開き、やがて中心は凹む。表面は淡黄土色、淡赤褐色、わら黄色またはクリーム色で中心部はそれより濃い色である。縁部は長い間内側に強く巻き、典型的な条線がある。ひだは密、上生-直生、肉から離れやすく、淡いクリーム色または帯白色、老いたり、こすったりすると赤褐色~さび褐色になる。柄はかなり短く頑丈で、しばしば曲がり、2~15×1~5cm,表面は縦の繊維状で、傘と同色あるいはそれより淡い。上部は消えやすいレモン黄色のふんわりとした微細綿毛におおわれる。肉はやや渋いかやや苦く、食用には適さない。8月~11月、広葉樹の林内に見られるキノコである。

      ファ-ブルはこの図版でT. acerbum の外観、色、傘縁の溝線などの特徴をとてもよく描いているが、通常のものより柄が少し細すぎるようである。

 


 

208 Tricholoma equestre flavovirens

208 -  Tricholoma equestre

解釈: Tricholoma flavovirens (Pers.: Fr.) Lund. & Nannf.

異名: Tricholoma equestre (L.: Fr.) Quél. 【最近の国際菌類命名法の改定により再びこの学名になる。】

【和名: キシメジ、キシメジ属】

      Tricholoma equestre (L.: Fr.) Quél. 【キシメジ】の傘は径3~12cm、まんじゅう形のち平らに開き、時にはやや中高、ついには中央が凹むか、でこぼこ状になる。表面はT.auratum 【シモコシ】より乾性であり、初めはオリーブ黄色または硫黄色、のち褐色か赤褐色の微繊維や小鱗片におおわれる。縁部は最初内巻き、のち真直、波形になり、条線は見られない。ひだは密、ほてい腹状、湾生-ほとんど離生、鮮やかなレモン黄色。柄は太長く、傘と同色、上部はほとんど白色。

      T. equestre の肉は緻密で T.auratum より黄色っぽく、いわゆるキノコの香りがし美味しいと言われている。8月~11月、針葉樹の特にマツ林に普通に見られるキノコである。

      図版には生長過程の異なる数本のキノコが描かれており、中には肥満した柄もあり、肉の黄色などの特徴がよく表わされている。


 

209 Tricholoma equestre flavovirens

209 -  Tricholoma equestre

解釈: Tricholoma flavovirens (Pers.: Fr.) Lund. & Nannf.

【和名: キシメジ、キシメジ属】

      この図版の  T. equestre 【キシメジ】は前図よりもっとこの種の典型的な特徴が表われている。傘には褐色の微繊維がはっきりと見られる。この小鱗片は通常中心部にしか見られないが、時には傘全体をおおっていることもある。乾燥時にはこの微繊維は表面から剥がれて小鱗片になる。通常ひだは全体がしばしば単一の鮮やかなレモン黄色だが、この図版のキノコのようにひだが淡黄色で稜はオレンジ黄色というのは稀である。


 

210 Tricholoma albobrunneum fracticum

210 -  Tricholoma albobrunneum Pers.     《1886年10月31日、松林》

解釈: Tricholoma fracticum (Britz.) Kreis. 【fracticum =折れた(柄)】

異名: T. batschii Gro Gulden,T. subannulatum (Batsch) Bres. non Peck,T. albobrunneum (Pers.: Fr.) Kummer pp.

【和名: なし、マツシメジの近種、キシメジ属】

      ファ-ブルの時代には数種のキノコが Tricholoma albobrunneum (Pers.: Fr.) Kummer  と呼ばれていた。現代では、広義のT. albobrunneum  ss lato の中には  T. striatum (Schaeff.) Sacc, 【マツシメジ】とT. fracticum (Britz.) Kreis. とT. ustaloides Romagn. の3種が分類されている。

      T. fracticum の傘は初めまんじゅう形のち平ら、径5~12cm,表面は赤褐色、《マロニエの実》色、あるいは鮮やかな黄褐色、初めやや粘質のち乾質、縁部は長い間内巻き、溝線や条線はなく平滑。ひだはやや密、湾生-垂生、クリーム白色、時には赤褐色の細点が見られる。柄は短く頑丈で、4~12×1~3.5cm、時にはほてい腹状、上部  辺りには薄い膜があり、膜の上部はほとんど平滑で白色、柄の下  は縦の繊維状で淡褐色【学名の由来】。肉は白色、緻密、味はかなり苦く、小麦粉臭またはすいかの臭いがする。9月~11月マツ林に発生する。

      図版のキノコの肉は厚く、白色で、柄の上部にはつば状の膜がはっきり見られるが、それ以下の柄の表面は平滑で鱗片はなく、しかも畝状というのは異例なことである。


211 Tricholoma oedipus

211-  Tricholoma oedipus     《1893年8月7日描き直す》

解釈: 不可能 【oedipus=太い足】

      図版のキノコは全体が真っ白で、柄は下部で急にふくらみ、大きな球根状である。ファ-ブルが同定したTricholoma oedipus  という組合わせの学名は存在せず、他の属に Hemipholiota oedipus (Cke.) Bon があるにしても、図版のキノコとは全く似ていない。もしかしたらファ-ブルはきわめて珍しい新種のキノコを採集したのかもしれない。

      あるいは次に掲げるどれかの突然変異の一種といった見方もできる。

  -Leucopaxillus lepistoides (Maire) Sing.、

  -Lyophyllum connatum (Schum. : Fr.) Sing. 【オシロイシメジ?】

  -Tricholoma columbetta (Fr.: Fr.) Kummer 【シロケシメジ】

  -Tricholoma album (Schaeff. : Fr.) Kummer

  -Calocybe gambosa (Fr.: Fr.) Donk 【ユキワリ】

      また、ファ-ブルのキノコは白化現象による一品種かもしれないが、いずれにしても正確な詳細が不明であり、これ以上推定を重ねることはできない。


 

212 Tricholoma sejunctum

212 -  Tricholoma sejunctum    《189?(不鮮明)8月12日描き直す》

解釈: Tricholoma sejunctum (Sow.: Fr.) Quél. 【sejunctum =離れた(ひだ)】

【和名: アイシメジ、キシメジ属】

      Tricholoma sejunctum (Sow.: Fr.) Quél. 【アイシメジ】の傘は径3~10cm,初めまんじゅう形のち平らだが、しばしば大きく波打って不規則な形となり、表面はオリーブ黄色~黄緑色、中心部には黒っぽい放射状の微繊維が密生し、暗褐色あるいは赤褐色を呈する。ひだはやや疎、白色、時には僅かに黄色。柄は3~12×1~3cm、多少とも細長く、しばしば曲がり、下部は細まり、白色あるいは黄色、基部は赤褐色がかる。

      この種は8~11月、平野部の広葉樹の林内にかなり普通に見られるキノコで、肉は初めは辛くないが、のち僅かに苦みをおび、香りも当初の小麦粉臭がのちはすえた臭いになる。食用の可否は不明である。

      ファ-ブルはこの図版に、緑色がまったくなく、淡い黄色の勝ったキノコを描いている。断面図によればひだは白色で、かなり幅広く、深い湾生。傘の表面の微繊維は若い子実体では見られず、成熟するに連れてだんだんと表われてくる。


 

213 Tricholoma terreum ssp scalpturatum murinaceum

213 -【右】 Tricholoma murinaceum (var. squarrulosum)

解釈: 不確かTricholoma squarrulosum Bres. ? 【squarrulosum =鱗片のある】

異名: Tricholoma atrosquamosum (Chev.) Sacc. var. squarrulosum (Bres.) Kühn. & Romagn. = T. murinaceum ss. Quél. non plur. auct.

【和名: クリゲシメジ、キシメジ属】

      Tricholoma squarrulosum Bres. 【クリゲシメジ】の傘は径4~8cm、初めまんじゅう形のち平らになり、しばしばゆるやかな中丘があり、表面は灰色、灰黒色または汚粘土色、小鱗片におおわれるが、特に中央部では密生している。傘縁は内巻き、やや波形、条線はない。ひだは多少とも密、幅広く、深く湾生、白色のち帯灰色、稜はひだと同色で小鈍鋸歯状。柄は4~9×0.5~2cm,時には太短く、下部はしばしば曲がり、表面は帯褐灰色で、黒褐色のささくれ小鱗片におおわれる。

      肉は小麦粉のような味であり、僅かに果物あるいはこしょうやバージルの香りがし、切断時すぐには小麦粉臭がある。

      このキノコは晩夏~11月、山岳部の針葉樹の林内に発生し、平野部の広葉樹林では稀である。

      一本しか描かれていない図版のキノコがT. squarrulosum であるならば、柄の鱗片が少なすぎるので、むしろ近種で多数の学者が基準種とするT. atrosquamosum (Chev.) Sacc.ではないかと思われる。この種はT. squarrulosum よりやや大型のキノコで、柄の鱗片は少ない。図版のキノコのように、柄の上部に鱗片がまったくないというのはいずれの種にしてもきわめて珍しいことである。これ以外の他の特徴(顕微鏡的特徴も含む)は二種とも同じであり,この二つのキノコの間には多数の中間的な種が存在しており、それらを単に変種 var. squarrulosum (Bres.) Kühn. & Romagn. 学者もいる。おそらく図版のキノコはこの中間種の一つではないかと思われる。

【左】  Tricholoma terreum ssp. scalpturatum

解釈:Tricholoma scalpturatum (Fr.) Quél. 【scalpturatum =彫られた】

【和名:アクゲシメジ、キシメジ属】

      Tricholoma scalpturatum (Fr.) Quél. 【アクゲシメジ】の傘は径2~7cm,最初円錐形、のちまんじゅう形、やがて中高の平らに開き、さらにしばしば中央部がくぼむ。表面はベージュ色~黄土色、その上を、灰褐色~黒灰色の鱗片がおおい、縁部になるほど散在する。傘縁は最初強く内に巻き、のち広がり、条線はない。ひだはかなり密、深く湾生し、白色で、前図のT. squarrulosum  とは異なり灰色にはならず、老いると黄変するといった典型的な特徴を有する。柄は細長く、3~8×0.5~2cm、球根状ではなく、表面は白色。肉は初め白色のち黄色、小麦粉臭があり、熱を加えると黄変する。4月~12月広葉樹や針葉樹の林内に普通に見られるキノコである。

      この種を他の近種と区別する重要な特徴は二つある。一つは黄変がひだから始まり、老いるとキノコ全体が黄色になり(ファ-ブルの図版にはそれは見られない)、もう一つは小麦粉の味がすることである。


 

214 Tricholoma scalpturatum

214-  Tricholoma  scalpturatum  (この学名はファ-ブルの手記によるものではない)

【図版にはファ-ブルの手書きの  Tricholoma  terreum  の学名が見られるが、上記の学名になっているのは疑問である】

解釈:Tricholoma  scalpturatum(Fr.)Qu  l.

【和名:アクゲシメジ、キシメジ属】

      この図版のキノコは図版213の左側のものを描き直したと思われるので、この種の特徴は前図を参照。


 

215 Tricholoma terreum

215-Tricholoma  terreum    《1889年11月28日、ラガールの松林》

解釈:Tricholoma  terreum (Schaeff.:Fr.)Kummer 【terreum=土(色)】

【和名:クマシメジ、キシメジ属】

      Tricholoma  terreum(Schaeff.:Fr.)Kummer【クマシメジ】の傘は、初め円錐形のちわずかに中高の平らに開き、径3~7cm、灰色、ときにはやや褐色、中心部はもっと暗い色である。傘の表面全体は暗褐色か暗灰色の微繊維や繊維束におおわれ、これもまた中心部はもっと暗い色である。傘縁は長い間内に巻き、しばしば波打ち、条線はない。ひだはやや密、湾生、時には小歯により多少垂生、汚白色~やや灰色。柄は頑丈で3~8×0.6~2cm、上下同大またはわずかに下部が細まり、表面は上部がぬか状でそれ以下は平滑で白色~淡灰色。

      味や香りにそれほど特徴はないか、あるいはいわゆるキノコの香りがあり、美味しいと言われている。8月~12月、針葉樹、特にマツ、トウヒの林内に群生または束生し、普通に見られるキノコである。

      ファ-ブルはこの図版では、傘がやや中高の平らで、濃い帯褐灰色、縁部は波打ち、肉は白色、柄にはコルチナ状被膜の痕跡はなく、成熟すると中空、といったこの種の典型的な特徴を有するキノコを実にうまく描いている。