165 Polyporus picipes durus

165-  Polyporus picipes Fries  optim.      《1888年10月9日》

解釈:  Polyporus durus Tim.

異名: Polyporus picipes Fr.

仏名: Polypore à pied couleur de poix

【木タールピッチ色の足のサルノコシカケの意】

【和名:アシグロタケ】

      ファ-ブルの同定は正確である。このキノコの真っ黒い柄がそのまま種名となっている。Polyporus durus Tim. 【アシグロタケ】 の傘は径 20 cm、通常左右非対称の漏斗形で波形に屈曲し、表面は基本的にはクリ色、中央部はそれよりもっと濃い色であり、肉はかなり薄い。下面はクリーム色、孔口はきわめて微細、4 ~ 7 個/mm、円形。柄は細く、しばしば偏在、黒色(全体あるいは下部)である。

      この美しいアシグロタケは広葉樹林に春から秋まで見られる一年生のキノコである。

      Polyporus varius (Pers. : Fr.) Fr. 【キアシグロタケ】 はアシグロタケより小型で、傘の色ももっと薄い。傘は漏斗形で波形~耳たぶ状、表面は黄土褐色でより濃い色の条線が放射状にのびる。柄は偏心~側生、下部は黒色。孔口は微細で円形、類白色~黄土色。肉は最初白色のちクリ-ム色、乾くとコルクのように硬く、弾力性がある。アシグロタケ同様このキノコも食用にはならない。

        キアシグロタケは広葉樹の特にヤナギ属の朽ち木に発生する一年生のキノコである。

        Polyporus varius var. nummularius (Bull.) Fr. の傘は円形、表面は淡い黄土色である。


 

 166_Polyporus_squamosus

166-  Polyporus squamosus 《ファ-ブルは学名を記していない》

解釈: Polyporus squamosus (Huds. : Fr.) Fr.

仏名: Polypore écailleux 【鱗片のあるサルノコシカケ】

【和名:アミヒラタケ】

      図版のキノコはコンソール形【壁に取りつけられた装飾用テーブル、つまり基物に直に付く(日本では俗にさるのこしかけと呼ばれているものがこれに相当する)】、肉厚、表面は黄土色がかったクリ-ム色、大形の鱗片があり、柄は短く、側生、といった特徴から、ファ-ブルが同定したように Polyporus squamosus 【アミヒラタケ】である。

      アミヒラタケは傘の径が最大50 cm、厚さは5cmにも達する大形のがっしりしたキノコである。表面は黄土色を帯びたクリ-ム色~黄金色、その上には褐色の繊維状鱗片が見られる。柄は通常側生、基部は黒色である。肉は厚く、最初は柔軟であるがのちコルク質、小麦粉臭がある。孔口は不規則でかなり大きく、多角形、類白色~クリ-ム色、時には黄土色。硬くならない前の若いキノコは食用となる。

      アミヒラタケは春から秋、さまざまな広葉樹に発生し、白腐れを起こす菌で、普通に見られるキノコである。

      小アミヒラタケといわれる Polyporus tuberaster (Pers. : Fr.) Fr. 【タマチョレイタケ】の傘はほぼ円形、柄はほとんど中心生であり、傘の鱗片は、アミヒラタケほど地肌の色との対比が著しくない。管孔は長く垂生し、孔口は多角形である。このキノコは春に広葉樹の倒木に発生する。

      Dendropolyporus umbellatus (Pers. : Fr.) Jülich 【チョレイマイタケ】は分枝した柄の構造と多数の傘が灰褐色であることから、簡単に上記の二種と見分けがつく。


 

 

167 Polyporus arcularius mori

167-  Polyporus  arcularius  Batsch    《Polyporus  rhombiporus Pers.,クワの木》

解釈: Polyporus mori Pollini : Fr.

異名:  Favolus europaeus Fr.,P. alveolarius (de Cand. : Fr.) Bond. & Sing.

【alveolarius=蜂の巣状、mori=クワの木の】

【和名:ハチノスタケ】

     

図版のキノコは柄が側生、かなり短く、下面はハチの巣状、孔口はとても大きく、傘はクリ-ム色といった特徴から間違いなく、Polyporus mori Pollini : Fr. 【ハチノスタケ】だと言える。従ってファ-ブルが同定した P. arcularius Batsch. : Fr. 【アミスギタケ】は間違いだと思われる。それにファ-ブルが《クワの木》と記しているのは、私達の解釈を裏付けるものである。

      ハチノスタケはもともと南国に発生する好熱性のキノコで、北部では稀であり、またクワの木ばかりではなく、他の多くの樹木にも発生する。

      この美しいキノコは、傘の表面のクリ-ム色の地に少数の淡黄褐色の細点が見られる。下面はクリ-ム色でハチの巣状、孔口はきわめて大きい。肉はかなり薄く、硬いので食用には適さない。

      アミスギタケは,柄が傘の中心にあり、灰褐色、傘は帯黄褐色,孔口は白色~黄土色でハチノスタケより明らかに小さい菱形であることから、簡単に見分けられる。このキノコも南国の種で、さまざまな広葉樹に発生する。

      Polyporus tuberaster (Pers. : Fr.) Fr. 【タマチョレイタケ】の傘は白っぽい地肌に黄土色の鱗片が散在し、孔口がほとんど円形であることで、上記二種と区別できる。


 

168 Polyporus lucidus Ganoderma lucidum

168-  Polyporus lucidus

169 Polyporus lucidus Ganoderma lucidum

169-  Polyporus lucidus      《1888年12月30日》

解釈: Ganoderma lucidum (Leyss. Fr.) Karst.

仏名: Polypore luisant, laqué

【つやつやした、または漆を塗ったサルノコシカケの意】

【和名:マンネンタケ】

 

      この二枚の図版には、さまざまな外観や生長過程の異なる Ganoderma lucidum 【マンネンタケ】が描かれている。漆を塗ったようなこのキノコは他のどんな種とも混同することはない。時には傘の表面の光沢が、下面の管孔から放出された赤褐色の胞子におおわれて見えなくなることがある。

      マンネンタケはかなり頻繁に見られ、夏と秋、林内の切株の近く、地中の枯死した根の上、古い樹木の根もとなどに発生する。

      このキノコは肉がコルク質で硬く、食用には不向きであり、私達にとっては全くの装飾用でしかない。ていねいに防虫剤を施して乾燥させると長く保存することができる。

      中国ではマンネンタケは伝統的に重要な位置を占めている。それは《神の草》霊芝と呼ばれ、永続性や不死の象徴として、昔は賓客への贈物の一つとされていた。今日でも貴重なキノコとして煎じて使われ、伝統的な漢方薬の一つとして、特に老人を対象とした食欲増進剤、神経鎮静剤、坑不眠剤として重要な位置を占めている。

            日本ではこのキノコは栽培され、マンネンタケあるいは霊芝の名前で市販されており、長寿のお守りとされている。


 

 

170 Polyporus evonymi Phellinus ribis

170-  Polyporus evonymi Kalch.

《[...不明瞭]の変種、グランジュ【地名】1891年3月、Evonymus europaeus 【ニシキギ属】の切株》

解釈: Phellinus ribis (Schum. : Fr.) Karst. f. evonymi Kalch.

【和名:なし、キコブタケ属】

 

      ファ-ブルが 《 Evonymus europaeus の切株》と記していることや、図版の断面や傘の下面を見ると、彼の同定が正確であることが確認できる。

      Polyporus ribis (Schum. Fr.) Karst. は傘の径約 5 cm、同心の環溝があり、黄褐色~暗褐色、縁部はそれより淡い色合。下面は黄褐色、孔口は微細。肉は硬く、組織の異なる多層からなる。この種はさまざまな樹木や潅木に発生するが、基準品種はスグリ属の低木に関連して発生する。

      仏名で《にせほくちたけ》と呼ばれる Phellinus ignarius (L. : Fr.) Quél. 【キコブタケ】は、ことにヤナギ属に発生し、白腐れを起こす。傘はコンソール形、または馬蹄形、最大径 40 cm にも達し、表面は最初さび褐色のち黒色になり、縦横にひび割れを生じる。下面はニッケイ色~褐色、孔口は円形で微細。肉は木質で硬い。

      本物の 《 ほくちたけ 》 Fomes fomentarius (L. : Fr.) Fr.  【ツリガネタケ】の傘も馬蹄形で、表面には地肌より淡い色の同心環溝があり、肉はとても硬い。下面は灰褐色、孔口は円形で微細、管孔は多層で各層の厚さは 2 ~ 5 cm。このキノコは多年生、春から秋まで、広葉樹に発生する。


 

171 Polyporus hispidus Phellinus hartigii

171-  Polyporus hispidus        《1891年8月》

解釈: 不確か Phellinus hartigii (All. : Schn.) Pat. ?

【和名:モミサルノコシカケ、キコブタケ属】

 

      図版のキノコはどっしりとした外観と下面は淡黄色、孔口は微細といった特徴から、ファ-ブルが同定した Inonotus hispidus (Bull. : Fr.) Karst. よりも、むしろ山地のモミやトウヒに発生する Phellinus hartigii 【モミサルノコシカケ】だと思われる。しかしファ-ブルは生育地を記していないので、私達の解釈も正確さに欠けると言えよう。

      モミサルノコシカケは大型のキノコで、傘はコンソール形あるいは馬蹄形。表面には僅かに同心環溝があり、普通亀裂は見られず、黄褐色~黒色。下面は黄色~淡黄褐色、孔口は円形で微細、管孔の深さ 2 ~ 4 mm。肉は淡黄褐色~さび褐色、きわめて硬い。特にモミを好み(まれにトウヒ)、材に白腐れを起こす。

      Phellinus robustus ((Karst.) Bourd. et Galz. 【カシサルノコシカケ】は広葉樹、特にカシに発生し、たちまち材に黄白色の腐れを起す。傘の表面には隆起と交互に多数の同心環溝が見られ、老いると縦横にひび割れを生じる。縁部の新生部は厚く、生長を続けている限り鮮やかな色合いを持続する。


 

 

172 Polyporus ignarius Phellinus i

172-  Polyporus ignarius Linn.      《1888年12月15日》

解釈:不確か Phellinus ignarius (L. : Fr.) Quél. ? 【ignarius=火口】

仏名: Faux-amadouvier 【にせ火口茸の意】

【和名:キコブタケ(一名ニセホクチタケ)

      図版のキノコは、傘の表面の色、同心状の環溝と亀裂を欠くことから、Phellinus ignarius 【キコブタケ】と断定するのは難しい。しかしながらこの種の若い子実体であるとはいえるかも知れない。それにしても、キノコに捕えられている小枝にバラの葉に似たものが描かれているのは、まったく理解に苦しむ。

      キコブタケの傘はコンソール形、馬蹄形、幅 10 ~ 40 cm、厚さ 5 ~ 20 cm にも達し、同心状の環溝があり、初めさび褐色のち黒褐色、老いると縦横にひび割れが生じる。縁部は厚く、ビロ-ド状、さび褐色。下面はニッケイ色~褐色、孔口は円形で微細。肉は木質できわめて硬く、さび褐色。この種は多年生で広葉樹の特にヤナギ属に発生し、白腐れを起こす。食用にはならない。

      近種の Phellinus pomaceus (Pers. : Gray) Maire はキコブタケより小型で、傘と肉の色はより淡い色合いである。子実体はしばしばはっきりとした傘を形成しない。しかし時にはコンソール形も見られる。この種はリンゴなどの多数の果樹に発生し、材に白腐れを起こす。


 

 

174 Polyporus pinicola Fomitopsis p

173-  Polyporus hirsutus   《カシ材の杭上、1891年12月》

解釈:不確か Inonotus hispidus (Bull. : Fr.) Karst. ?

【和名:ヤケコゲタケ、カワウソタケ属】

      ファ-ブルがどんな種名のキノコを手にしたのか知るのは難しい。図版のキノコは、傘の色合いと顕著な粗毛が見られることから、ファ-ブルが同定した Coriolus hirsutus (Wulf. : Fr.) Quél. よりもむしろ Inonotus hispidus 【ヤケコゲタケ】ではないかと思われる。この種はさまざまな広葉樹とくにトネリコ、ニレ、リンゴの木などに発生する一年生のキノコである。

      I. hispidus の傘は幅 10 ~ 20 (40) cm、厚さ 5 cm、うちわ形、表面はビロード状~フェルト状、黄土色~たばこ褐色、老いると黒くなり、壊れやすい。下面は淡黄色~オレンジ黄色、孔口は円形または多角形、2 ~ 3個/mm。肉は基部では厚さ 4 cm、最初柔軟でスポンジ状、乾くと硬くなり壊れやすい。

      Inonotus cuticularis (Bull. : Fr.) Karst. 【カワウソタケに似る種】はあまり普通には見られないキノコで、カシやブナに発生する。この種は通常多数が重なって群生し、傘の表面は初めビロード状のち平滑、不鮮明な環紋があり、最初オレンジ色でのちさび色、ついにはタバコ褐色になる。下面は黄褐色のちさび色、孔口は円形でやがて変形する。肉は繊維質で、最初水分を含んで柔らかく、乾くとコルクのように硬くなる。上記二種とももちろん硬いので食用には適さない。


 

173 Polyporus hirsutus Inonotus h

174-  Polyporus pinicola

  《 Polyporrus pinicola Sow.,1886年12月、アレピン松の切株 》

解釈: Fomitopsis pinicola (Sow. : Fr.) Karst.

異名: Polyporus marginatus (Bull. : Fr.) Karst.

【和名:ツガサルノコシカケ】

      図版のキノコは、傘の表面と下面の著しいコントラストと縁部の鮮やかなオレンジ黄色、それにアレピン松の切株というファ-ブルの記載があることから、ファ-ブルが同定した通り Fomitopsis pinicola 【ツガサルノコシカケ】である。

      ツガサルノコシカケは生長の初期は黄色の瘤状、やがてコンソール形あるいは馬蹄形になる。傘の幅 15 ~ 30 cm、表面は赤褐色、縁部はオレンジ黄色、やがてこの表面は灰色になり、硬い松脂状の殻皮におおわれる。下面は淡いクリーム色、孔口は円形、微細で 2 ~ 3個/mm。肉は硬く繊維質、僅かに果物の香りがする。

      この種は針葉樹、時には広葉樹に発生する多年生のキノコで、たちまち材に赤腐れを起こす。針葉樹に発生する場合は馬蹄形だが広葉樹では多少とも平らである。

      Fomitopsis rosea ((Alb. et Schw.) Karst. 【バライロサルノコシカケ】は亜高山帯に発生するかなり稀な種で、若い時は美しい桃色、管孔は多層であるので、ツガサルノコシカケとはっきり区別できる。


 

175 Polyporus salignus Coriolus hirsutus

175-  Polyporus salignus Fries      《1893年2月12日》

解釈:不確か Coriolus hirsutus (Wulf. : Fr.) Quél. ?

【和名:アラゲカワラタケ、カワラタケ属】

      図版のキノコは、傘が白色でコンソール形、縁部は黄土色であることから Trametes gibbosa (Pers. : Fr.) Fr. 【オオチリメンタケ】を思わせるが、同じく傘が白色で、縁部が濃色の Coriolus hirsutus 【アラゲカワラタケ】は下面が白色~帯褐色、孔口は円形で微細であるところから、むしろ図版のキノコにより近いと思われる。しかしファ-ブルは、この種の背面の顕著な特徴である粗毛を描いていないので、この解釈も正確さに欠けると言えよう。

      アラゲカワラタケはハンノキ、カバノキ、ヤナギなどの広葉樹に単生あるいは多数が重なって群生し、たちまち材に白腐れをおこす。このキノコの傘は平たく、同心状の環紋や粗長毛があり、縁部は厚く、通常は褐色を帯びる。下面は初め白色のち灰色になり、孔口は円形で微細。肉は白色、コルク状。

      Coriolus pubescens (Schum. : Fr.) Quél. は傘が同じくクリーム色で、外観はアラゲカワラタケによく似るが、かなり珍しいキノコであり、傘の表面はビロード状で、放射状のしわと僅かな同心環紋が見られることで区別することができる。肉は薄く、きわめて軽量。山地の様々な広葉樹や果樹に発生する。