145 Morchella 313 20 avril 1888 Alluvions de l'Aygues

145-  Morchella vulgaris     《1888年4月20日、エーグ川の沖積土》

 解釈: Morchella esculenta (L. : Fr.) Pers.

仏名: Morille 【モリーユ】

【和名:なし、マルアミガサタケの近種】

 

      傘は通常ゆるやか円錐形か卵形で、高さ 3 ~ 10 cm、幅  3~7cm、中空、色はとても変化に富む。肋脈は白色あるいは灰色、曲がりくねり、厚く、褐色や黄土色あるいは黒色の不規則な蜂の巣房を取り巻く。老いると時には全体がさび色かがかることもある。柄は白色、ぬか状、空洞、不恰好、基部はふくらみ縦溝がある。

      春のキノコであるこの種は、しばしばニレ属、トネリコ属の林内にかなりよく見られる。食用のとても味しいキノコだが、有毒物質を除去するためによく火を通さなければならない。

      ファ-ブルが採集したキノコは褐色で、かなり白っぽい肋脈がさび色になり始めている。断面図には蜂の巣房の内部が柄に直生しているのがよく描かれている。

 

 

146 Panaeolus campanulatus sphinctrinus

146  -  Panaeolus campanulatus Linn.  《1886年9月9日、Panaeolus fimiputris

解釈: Panaeolus sphinctrinus (Fr.) Quél.

【和名:ヒカゲタケ、ヒカゲタケ属】

      傘がはっきりと円錐形で、表面は灰色の図版のキノコは、ファ-ブルが同定した Panaeolus campanulatus よりむしろ Panaeolus sphinctrinus 【ヒカゲタケ】だといえよう。特に左側の一連の子実体は傘がとても淡い灰色で、乾燥時に採集されたものだと思われる。ファ-ブルが左側の子実体の下に Panaeolus fimiputris あるいは fimipatris と記しているのは、このキノコを新種とみなして、おそらく彼の未発表の新しい名前を付けたものだろう。右側の子実体の場合は難解である。

     Panaeolus sphinctrinus は傘は最初円錐形のち鐘形、灰色、湿気のある時はほとんど黒色であり、中心部ははっきりと黄土色である。柄は細長く、主として灰色であるが、下部はそれより少し濃い色合である。図版のキノコは柄の基部が白く、フェルト状なので乾燥時に採集されたのは明らかである。肉は薄く、灰色、ひだは直生、初め灰色すぐに黒色になるが、稜は白色である。

      この種は夏の間、家畜を放牧している牧場に発生する。食用ではない。

 

 

147 Panaeolus sphinctrinus

147-  Panaeolus sphinctrinus      《1893年11月20日》

解釈: Panaeolus sphinctrinus (Fr.) Quél.

【和名:ヒカゲタケ、ヒカゲタケ属】

      図版のキノコは、その色や外形から前図のものと全く同じ Panaeolus sphinctrinus であると思う。ひだが黒色の左側の三本は、傘の色がかなり白っぽいので乾燥時に採集されたものだと思われる。

      本物の Panaeolus campanulatus (Bull. : Fr.) Quél. の傘は Panaeolus sphinctrinus よりさび褐色がかり、縁部ももっと広がっている。

      かなりよく見られる  Panaeolus rickenii Hora の傘は、しばしば中心突起があるが、Panaeolus speciosus Orton は、淡黄褐色で、ひだは粘土色がかった淡黄色である。

 

 

148 Paxillus involutus

148-  Paxillus involutus     《1893年10月24日》

解釈:Paxillus involutus (Batsch. : Fr.) Fr.

仏名: Paxille enroulé、Chanterelle brune

 【和名:ヒダハタケ、ヒダハタケ属】

      この図版の同定には何の疑問もない。Paxillus involutus【ヒダハタケ】の傘は径 4 ~ 15 cm、最初まんじゅう形のち平ら開きついには中心部がくぼみ、縁部は若い子実体ではつよく内に巻いている。表面は乾燥時はビロード状、湿気の多い時期には粘質であり、かなり淡いオリ-ブ色がかった黄褐色から濃褐色までと色の変化に富む。柄は短く、頑丈、曲がり、しばしば偏心性、表面は傘より淡い色合い。ひだはきわめて密、垂生、柄の近くで分叉や癒合し、最初は淡黄色のち黄土色~褐色で、擦れた所は赤褐色になり、イグチ科のキノコの管孔ように傘から簡単に分離し、その下の淡黄色の肉は空気に触れると褐色に変わる。

      ヒダハタケは春から晩秋までヨーロッパや北米などの針葉樹林や広葉樹林、特にシラカバやポプラを好んでよく発生する。

      ヒダハタケは長い間食用と考えられていたが、古い菌学の著作には全くその毒性については書かれていない。しかし 1948年のドイツの雑誌  Zeitschrift für Pilzkunde には、16 の中毒例中1例は死亡という記事が掲載されている。それ以来ドイツとポ-ランドで、多くの中毒事故がこのキノコに起因することが明らかにされた。そのほとんどの例がこのキノコを生や十分火を通さずに食べている。現在では例えよく火を通しても、 1963年にドイツで二人の婦人と男性一人を死亡させたように、このキノコの毒性は明らかである。しかし同じ食事をしても、免疫力の違いによって家族の中で発病しない人もいる。また、パリ地方の菌学者がこのヒダハタケを焼いて食べて、重体になったのも知られている。今後は、たとえ火をよく通しても、危険なキノコとして食べるのは避けなければいけない。

 

 

149 Paxillus involutus

149-  Paxillus involutus     《サン・テステ-ヴ【地名】、1889年10月31日》

解釈:Paxillus involutus Batsch : Fr.) Fr.

仏名: Paxille enroulé、Chanterelle brune

【和名:ヒダハタケ、ヒダハタケ属】

      この図版には柄が白い三本の若い子実体と二本の成熟したキノコが描かれている。ひだは柄の近くでかなり癒合しているのが見られ、管孔が不恰好なひだ状で、この属が《ひだのあるイグチ》だと考えられていることがよくわかる。

      これ以外の特徴は既に図版148で記述しているので、ここではこのキノコの毒性を再び強調するだけに留める。

 

 

150 Ag lamellirugus Paxillus panuoides

150-  Ag. lamellirugus       《1887年11月30日》

解釈:Paxillus panuoides (Fr. : Fr.) Fr.

異名: Paxillus lamellirugus  De Cand.

【和名:イチョウタケ、ヒダハタケ属】

      図版のキノコは柄がほとんどなく、長く垂生したひだと、傘は扇形で耳たぶ状の縁が内に巻き、ファ-ブルの同定が正確であることを示している。不思議なのは、淡黄色のあまりにも長く垂生したひだに魅せられたのか、傘の表面が図版151と同様描かれていないことである。

      Paxillus panuoides 【イチョウタケ】の傘は不規則な扇形で細毛を有し、オリーブ黄色 (var. ionipus は紫の色合い)。柄はきわめて短いか無柄。ひだは密、垂生、分枝し、最初は粘土の色合で傘より淡い色。肉は薄く、黄土色。

      あまり頻繁には見られないキノコだが、針葉樹の木屑や建築材に発生する。

 

 

151 Paxillus lamellirugus P panuoides

151-  Paxillus lamellirugus D.C.  《松の切株、1886年11月20日)

解釈:不確か  Paxillus panuoides (Fr. : Fr.) Fr. ?

【和名:イチョウタケ、ヒダハタケ属】

      この図版の同定は不確かである。図版のキノコは傘がほとんど全部広がって、かなり老いたものだとわかる。ファ-ブルは柄の下部の綿毛を正確に描いているが、ひだは異常にサ-モンオレンジ色である。

      ヒダハタケ属は《ひだのあるイグチ》と言われ、イグチの管孔と同様にそのひだは傘の肉から簡単に分離でき、クギタケ属のひだと違って密である。ヒダハタケ科にはヒダハタケ属、Hygrophoropsis aurantiaca (Wulf.) R. Maire 【ヒロハアンズタケ】、Omphalotus illudens  (Schw.) Sacc. 含まれるが、いずれも強い毒性を有するキノコである。

 

 

152 Paxillus sp P filamentosus

152  -  Paxillus        《1893年9月20日》

解釈:不確か  Paxillus filamentosus Fries ?

【和名:なし、ヒダハタケ属】

      この図版には不思議なキノコが描かれている。全体の様子や、見るからに薄い肉、傘縁は僅かに畝状、内巻ではなく、ひだは柄に垂生し、特に傘の表面は細綿毛におおわれるといった特徴は、Paxillus filamentosus を思わせる。

      Paxillus filamentosus はハンノキ属の林内以外では知られておらず、ヒダハタケに似るが、その傘縁は少なくとも生長した子実体ではあまり内巻きではなく、傘の表面はファ-ブルが描いているように細綿毛を有する。図版のキノコのひだは癒合し、キヒダタケ属に見られる長い孔口状でさえある。従来の著作にはこの特徴は記述されていない。しかしながら、たった一つのヨーロッパ種である Phylloporus rhodoxanthus 【キヒダタケの近種】は図版のキノコとはあまりにも違いすぎている。

      ヒダハタケはとても変化に富んだ特徴を持つ種であり、イグチ属のような柄に本当の網目を持つものさえあるので、近種の Paxillus filamentosus が同じく変化に富んでいるからと言ってそれほど驚かない。従ってファ-ブルはこの種の異型のキノコを採集したか、あるいはまだ記録されていない変種であるかもしれない。それ故にファ-ブルは慎重を期してこのキノコに種名を付けなかったのだと思われる。