113 Inocybe trinii patouillardii b

113-  Inocybe trinii        《1891年6月1日、ククルドン【地名】》

解釈: Inocybe Patouillardii Bres.

異名: Inocybe lateritia Rick.,Inocybe erubescens Blytt. ss. Kuyper

仏名: INOCYBE DE PATOUILLARD【Patouillard 氏のアセタケの意】

【和名:なし、アセタケ属】

      通常アセタケ属は個体同士が非常に似通っていて同定が微妙だが、《Patouillard 氏のアセタケ》はかなり簡単に見分けがつく種である。ファ-ブルの図版には、成塾した素晴らしい二本のキノコと断面図が描かれている。図版も含めてこの種の全体の特徴を見てみよう:

  -傘は厚く、白色、若い子実体では少し黄色っぽく、成長に伴って、この図版のように、一部あるいは全体に多少とも赤色-鮮朱色の色合が広がる。表面は鱗片ではないが光沢のある微繊維におおわれる。傘の径は 2 ~10 cm とさまざまで、初め鐘形-円錐形、のち多少の乳頭状突起を残しながら不規則な平らになる。

  -ひだは密で、厚く、幅は広くなく、やや垂生しばしば離生、最初桃色がかった白色、やがてさび色かオリーブ色がかった暗褐色になり、時には朱色の染みが見られる。ファ-ブルの断面図のひだはおそらくまだ成熟していない若い子実体であろう。

  -柄は細いかあるいは太い円筒形、上部に向かって少し太く、表面は微繊維状であり、2 ~15 cm × 0.6 ~ 2 cm、しばしば曲がり、下部はファ-ブルがうまく描いているようにいつも膨らんでL字形に曲がっている。成熟するに連れて表面の微繊維は傘と同じ色合いになり、条線が表われてくる。

  -コルチナは極く若い子実体にしか認められないので、この図版では見ることができない。

      このキノコはアセタケのなかで最も毒性の強い一種であり、F. Thellung (1946年)によれば、ムスカリンの含有量は新鮮なキノコで、重さの 0.037% である。

      あまり頻繁には見られないキノコで、発生時期はフランスでは、春の半ばごろからもし気象条件が良ければ夏まで見られる。広葉樹林の特にブナや公園の菩提樹の下、裸地や森の周辺部の明るく開けた場所の石灰質の土壌に発生する。

 

 

114 Inocybe rimosa b

114-  Inocybe rimosa    《1893年8月10日描き直す》

解釈: Inocybe rimosa (Bull. : Fr.) Kummer

異名: Inocybe fastigiata Schaeff., Inocybe brunnea Quél., Inocybe infracta Velen.

【和名:オオキヌハダトマヤタケ、アセタケ属】

      この美しい図版からはファ-ブルが同定した Inocybe rimosa 【オオキヌハダトマヤタケ】に何の疑問も生じない。このキノコは多くの変化性を有する種で、土壌や生育環境などによって、外観、色、香りなどが異なる。幸いにも図版のキノコはそれぞれ生育段階の異なったものが描かれているので、この種の《平均的な型》の見本のようである。

      オオキヌハダトマヤタケが持つ安定した特徴は:

  -傘は径22~5 cm ときには 9 cm にも達し、初め円錐形-鐘形のち平らになり、中心突起はいつまでも残り、縁部は最初内に巻く。表面は多少藁色の繊維束が放射状にひびわれ (rimosa の種名の由来)、そのひびわれの間から白い肉がうかがわれる。この特徴をファ-ブルはとてもうまく描いている。

  -ひだは密であまり幅広くなく、ほとんどほてい腹状、黄土色。一般に成熟した子実体ではひだは帯オリーブ色だが、この図版ではそれは見られない。しかしこの特徴はいつも一定しているとは限らない。 

  -柄は円筒形あるいは上部で少し細まり、硬く、若いときは中実。表面は初め白色、老いるとほとんど傘と同色、上部にしばしば見られる条線はやがて白色の毛ばだった小鱗片におおわれる。この特徴はこの図版のいくつかのキノコの柄に見られる。柄の肉は老いると中がえぐれて、褐色がかった黄土色に変わる。断面図にはこの変色の始まりが見られる。

  -オオキヌハダトマヤタケのコルチナはとても消えやすく、図版のキノコは成熟しすぎているためにその痕跡もない。

      オオキヌハダトマヤタケは毒性を有する種で、ムスカリンの含有量は新鮮なキノコで、重さの約 0.01%  に当たる。夏と秋、広葉樹、針葉樹を選ばずかなり頻繁に見られる。

 

115 Inocybe fastigiata rimosa b

115-  Inocybe fastigiata Sch.        《1891年6月6日、ククルドン【地名】》

解釈: Inocybe rimosa (Bull. : Fr.) Kummer

異名: Inocybe fastigiata (Schaeff.) Quél.

【和名:オオキヌハダトマヤタケ、アセタケ属】

 

      この図版には前図によく似たキノコが描かれている。

      1891年にファ-ブルはこれらのキノコを Inocybe fastigiata Schaeffer と同定したが、もし20世紀の初めに Bresadola が図版の太い二本のキノコを見たならば、かれの新種 Inocybe umbrinella と同定しただろう。この種は I. fastigiata より大型で、傘の表面は大まかな放射状のひびわれがある。しかし Heim は1931年のアセタケ属の論文 《Le genre Inocybe》 の中で、この種を Inocybe fastigiata var. umbrinella (Bres.) Heim 【オオトマヤタケ】にしている。現在はファ-ブルの時代と同じ解釈をしており、先行優先原理を尊重して当面は Inocybe rimosa (Bull. : Fr.) Kummer 【コバヤシアセタケに似る種】と呼ばなければなない。

      ファ-ブルが二本の大きなキノコの間に小さくて細い一本を描いているのを見ると、自然は個体と個体の間にたゆまず段階的な多くの中間的な個体を作っていることを感じさせられので、これらのキノコすべてを同じ種名にしてよいと思う。

 

116 Inocybe jurana cf adaequata b

116-  Inocybe jurana   《1893年3月18日描き直す》

解釈: 不確か Inocybe adaequata (Britz.) Sacc. ?

異名: Inocybe jurana (Pat.) Sacc., Inocybe rhodiola Bres., Inocybe frumentacea Bull., Inocybe deducta (Britz.) Sacc.

【和名:なし、アセタケ属】

 

      この図版には当惑させられる。三本のキノコは傘が放射状にひびわれ、たばこ褐色のひだと全体の様子から Inocybe adaequata を想定できるが、問題なのは傘の《青灰色》で通常この種には見ることのない色である。多くの作家が  この種は、赤褐色、鉄さび色、帯黄褐色、ハシバミ色、緋色、暗紫色としており、《葡萄酒の澱色》つまり赤紫色の色合いが、共通して彼らの記述にほどんどいつも表われている。

      図版のキノコは成熟したもので、寄生もされず新鮮なうちに採集されたように見える。推測ではあるが、ファ-ブルはまったく異型のキノコを採集したのではないだろうか。この図版がアセタケ属の別種を描いているとはまず考えられず、ましてや傘の表皮の様子やひだの色からして、別の属の一種であるとはとうてい考えられないので、この推定を強固にするために図版の  Inocybe adaequata の他の特徴を見てみよう:

  -柄は円筒形、下部は多少膨らみ、上部は初め類白色だが、やがてかなりの部分が微繊維状の赤褐色になる。

  -断面図の肉は白色。

  -ひだは、ややほてい腹状、柄との関係はほとんど離生。

      以上の特徴は Inocybe adaequata の鑑別上の記述に一致するところから、私達の推定をかなり正確なものにしてくれた。

      このキノコは石灰質の土壌を好み、6月~11月、広葉樹のカシ、ハシバミ、ブナの林内、草地や荒れ地、公園などに発生する。

      毒性は無いと言われているが、アセタケ属の同定は難しいので食用にするのは避けた方がよい。

 

 

117 Clitocybe tortilis Laccaria

117-【上】 Clitocybe tortilis Bolt.,   Laccaria tortilis        《1886年11月4日》

    【下】 Clitocybe tortilis     《1891年11月15日》    Laccaria tortilis

解釈: 不確か Laccaria tortilis(Bolt.) Cke. ?

【和名: ヒメキツネタケモドキ、キツネタケ属】

 

      ファ-ブルの同定は疑問である。

      図版のキノコはすべて柄が短く、曲がっているが、これらは Laccaria laccata 【キツネタケ】の数品種の中に見られる特徴であり、傘もほとんど変形しておらず、僅かに波打っているだけである。ところが通常 Laccaria tortilis 【ヒメキツネタケモドキ】の傘はくねくねと曲がって変形している。

      ヒメキツネタケモドキの発生は局地的ではあるが、湿った土壌や広葉樹林のほとんど草の生えていない林道沿によく見られる。柄はかなり短く、傘は非常に縮れて波打っているのは、この種の代表的な特徴である。しばしば沿道に発生するとはいえ、傘の外観がずいぶんメチャクチャなので踏みつけられたキノコのようである。

      Laccaria laccata (Scop. : Fr.) Bk. & Br. 【キツネタケ】はヒメキツネタケモドキよりはるかに大きく、傘は通常もっと整然としている。この種は多様な形を有し、あらゆる森や境界林にきわめてふつうに発生する。

      以上の二種はともに食用になる。