88 Fistulina hepatica

88-  Fistulina hepatica   《1887年10月8日》

解釈:Fistulina hepatica (Schaeff. : Fr.) Fr.

仏名:Fistuline, Foie de boeuf, Langue de boeuf 【牛の肝臓、牛の舌】

【和名:カンゾウタケ、カンゾウタケ属】

      ファ-ブルが描いたこのキノコは簡単に識別できる。カンゾウタケの若い時、成長時、それに断面図が見られるとても興味深い図版である。一方に偏った子実体は舌の形なのがよくわかる(牛の舌という名前の由来)。図版のキノコは柄の部分がかなり大きいが、実際にはほとんど無柄である。

      若いキノコの傘の表面は、明るい赤色で、下面の初々しい白色とのコントラストが著しい。

      しかし、成熟に従って赤褐色や肝臓の色(牛の肝臓の由来)のようになり、縁部には若い時の赤色が残り、成熟した子実層の黄白色との対比が見られる。

      断面図は雄弁で多くのことを示唆している。このキノコはおそらく成熟したものだと思われるが、表面は《肝臓》色、肉は血のような赤色で、切ったばかりの牛肉から滴る血を思わせる赤い汁を含んでいる。また、傘の菌糸や子実層の黄色くなった管孔の伸長の方向もよくわかる。

      さらに図版を注意深く見ると、ファ-ブルは、特に若いキノコの傘の表面に、舌に見られるような乳頭突起状の特徴を見事に描いている。しかしたった一つのカンゾウタケの重要な特徴である、全体が多肉で柔らかく、水気が多いなどが図版では見られない。

      稀ではあるが時には、カンゾウタケは、舌状や扇形に広がらず、半球形の小さな塊茎状に留まり、下面の子実層は発育せず、無性的な胞子である分生子しか作らない。この不完全な段階は: Ceriomyces hepaticus Saccardo あるいは Ptychogaster hepaticus (Saccardo) Lloyd と呼ばれる。

      カンゾウタケの分布は、ヨ-ロッパ、アジア、オ-ストラリア、北米など。ヨ-ロッパではかなり頻繁に見られる。しかし、中央ヨ-ロッパになるほど数少なくなっている。スイスでは稀なキノコなので保護を呼びかけているほどである!フランスでは豊富に見られ、年によって多少の違いはあっても、減少の懸念は少しもない。

      カンゾウタケは材上性で、腐生菌あるいは寄生菌で、古い立木上、切って間もない切株、埋れ木の上や、腐れ木を問わず林内や公園に発生する。樹木に褐色の腐朽を起こし、木を根元近くから襲い駄目にしてしまう森林にとっては有害なキノコである。

      若いキノコは食用で、ビタミンCが多く、ビフテキのように焼いたり、生でサラダにと評価はかなり高い。

 

 

89 Flammula alnicola Pholiota highlandensis

89-  Flammula alnicola 【和名:なし、榛の木の Flammula の意】      《1893年11月20日》

解釈:不確か Pholiota highlandensis (Peck) A.H. Smith & Hesl. ?

異名:Pholiota carbonaria (Fr.) Sing.

仏名:Pholiote charbonnière 【炭焼きの Pholiota の意、昔は炭を焼いた跡に決まって発生した】

【和名:ヤケアトツムタケ、  スギタケ属】

      ファ-ブルのこの同定は、私達同様確かではなく、ことに図版の焼け焦げた木は問題である。91番の図版も同じ様に不確かであり、もしかしたら、ファ-ブルは本当の Pholiota alnicola【旧名の Flammula は  ”小さな炎”の意味で、炎の色をした Pholiota(スギタケ)と Gymnopilus(チャツムタケ)の総称。】を知らなかったのではないかと思う。この木はプロヴァンスでは比較的少ない。従って、通常古い焼け跡に生える Pholiota carbonaria 【ヤケアトツムタケ】が十分考えられる。

      ヤケアトツムタケの傘の表面は少し粘質、赤褐色がかった淡黄褐色、縁に向うほど黄色といった特徴から判別できる。ひだは湾生-垂生で黄色~ニッケイ色。柄は、下部は淡黄褐色、上部にかけてはほとんど白色、僅かにつば状のゾーンが見られる。

      図版のキノコは、ひだがすでに濃い色なので、成長を終えたものであろう。 このキノコは食用であるが肉質ではない。

      本当の Pholiota alnicola (Fr.) Sing. はハンノキやヤナギ類の切株にぎっしりと束生する。ひだはたちまちニッケイ色がかった褐色になる。柄はこの図版のものより長く、ゆたかなコルチナを有する。しかし食用ではない。

 

90 Flammula alnicola Pholiota highlandensis

90-  Flammula alnicola 【和名:なし    《1889年10月末日》

解釈:不確か Pholiota highlandensis (Peck) A.H. Smith & Hesl. ?

異名:Pholiota carbonaria (Fr.) Sing.

仏名:Pholiote charbonnière

【和名:ヤケアトツムタケ、  スギタケ属】

 

      前図と同様、このキノコもハンノキのスギタケにはほど遠く、むしろヤケアトツムタケを思わせる。ひだは初めとても薄い色合いだが、成熟すれば赤褐色になる。そして柄にはコルチナが褐色のつば状の名残りとして存続する。この図版の傘はヤケアトツムタケの典型的なオレンジ色をしている。このキノコは群生し、Pholiota alnicola のように密に束生はしない。

 

 

91 Flammula sapinea Gymnopilus sapineus

 

91-  Flammula sapinea Fries    《1886年11月20日、9-10=6-7、松の切株》

解釈:不確か  Gymnopilus sapineus (Fr. : Fr.) Maire ?    【モミの木のチャツムタケ  の意】

【和名:なし、チャツムタケ に近い種】

 

      柄の下部が膨らんでいることにより、この同定は確かではなく、胞子の図も簡略なものであまり役には立たない。

      Gymnopilus sapineus は傘は綿毛状~ささくれ状、淡黄褐色の細鱗片が黄色の地にはっきりと浮き出て見える。ひだは初め黄色、のちさび色の斑点が表われる。柄は最高6cmに達し、しばしば平たく扁圧し、コルチナがほんの僅か見受けられる。肉は傘、柄とも同色、特別な香りはなく、少し苦いので食用には適さない。

      これは針葉樹林に発生するそれほど稀ではないキノコである。

      Gymnopilus stabilis (Weinn.) K. & R. ex Bon は、最後には消えてしまう白いくもの巣状の外被膜が、傘に付いていることで識別できる。

      Gymnopilus penetrans (Fr.) Murr. 【和名:キツムタケ】は切株や針葉樹の朽ち木に発生するありふれたキノコで、柄は白っぽく、微繊維状、僅かにコルチナを有する。金色のひだは老いに連れてしみができてくる。食用ではない。

 

92 Gomphidius glutinosus

92- Gomphidius glutinosus  《1887年11月2日と6日、 Schaeff. 18-20 = 6-7

解釈:不確か Gomphidius glutinosus (Schaeff. : Fr.) Fr. ?【粘着性のオウギタケの意】

【和名:シロエノクギタケ、オオギタケ属】

 

      この同定は疑問である。シロエノクギタケは、つば状のゾ-ンの辺りの柄は膨らみ、被膜の名残りはたちまち黒っぽくなる(胞子)。このキノコの柄の下部は典型的なクロムイエロ-をしており、ひだはかなり長い間白色のままである。

      図版のキノコは切株に生えているようだが、一般に  シロエノクギタケは、ほとんどいつもトウヒと結びつき、その落葉土に発生する。

    しかしながらこの図版にはいくつかのオオギタケの代表的な特徴が表われている:

  -ひだは長く垂生、とても疎である。

  -傘は長い間白色。

      Gomphidius maculatus (Scop.) Fr. 【キオオギタケ】はその名前のとおり、たちまち黒っぽい染みが広がる。山のキノコであるがとりわけ亜高山帯に、カラマツに依存した Suillus grevillei (Klotsch) Sing. 【ハナイグチ】や Suillus viscidus (L. : Fr.) Roussel 【シロヌメリイグチ】としばしば一緒の発生が見られる。

      シロエノクギタケは美味しいが、料理の前に粘質の被膜を取り除かなければいけない。

      とても美しい色合いの  Gomphidius roseus (Nees : Fr.) Gillet 【オウギタケ】は、その傘のきれいなサンゴ色がかった赤色(のちレンガ色)で、シロエノクギタケと簡単に見分けがつく。

 

93 Chroogophus rutilus

93- Chroogomphus rutilus  《ファ-ブルは名前を付けなかった》

解釈:Chroogomphus rutilus (Schaeff. : Fr.) Miller 【鮮烈な赤色のクギタケの意】

異名:Gomphidus viscidus Fr.【粘性のオウギタケの意】

【和名:クギタケ、クギタケ属】

 

      この図版にファ-ブルは名前を付けていないが、これは明らかにクギタケであり、以下の特徴がこの同定を確実なものにしてくれる:

  -ひだは長く垂生、とても疎。

  -傘の肉は厚く、僅かに色が付いている。

  -柄は弓形、基部で細まり、上部にかけては紫色、下部はクロムイエロ-。

      新鮮な時、このキノコは粘性があり(粘着質ではない)最初のコルチナが不規則にゾ-ンを形成しているのが見られる。

      それは晩秋に明るく開けた針葉樹林の特に松林に、しばしば小さな群れで散生するキノコである。このキノコは食用であるが、あまり美味しくない。しばしば Lactarius deliciosus (L. : Fr.) S.F. Gray (118番と119番の図版を参照)と同じ場所に発生する。

Chroogomphus helveticus (Sing.) Moser 【スイスのクギタケの意】は、ひだが G. rutilus に比べるとより短い垂生で、全体がよりオレンジ色がかった山岳部に生えるキノコである。

 

94 Hebeloma crustuliniforme

94- Hebeloma crustuliniforme  Bull.

解釈:Hebeloma crustuliniforme (Bull.) Quél.

【小いさな菓子パンの形のワカフサタケの意】

仏名:Hébélome échaudé【エショデ=生地を湯がいてがら焼いた小ささな丸い菓子】

【和名:オオワカフサタケ、ワカフサタケ属】

 

      このキノコの同定は正確である。ひだには小さなしずくが、湿気の多い時期には水滴となった跡が見られ、縁部はまだ内に巻いたままであり、傘の色、柄が粉っぽく少し弓形というのは典型的なオオワカフサタケの特徴である。

 

    一般にこの種の傘は、まんじゅう形のち平たく、縁部は長い間内に巻き、時には図版の左のキノコのように波打ってさえいる。セ-ム革色でしばしば中心部はより濃い色合である。ひだはS字のような曲線を持ち、淡い粘土色がかった褐色、湿気の多い時にしみ出た小さなしずくが乾いて染みになっている。肉は特に傘部で厚く、切断面は白いままである。

      オオワカフサタケは夏と秋に広葉樹特にポプラやカバ林、公園などに群生する。肉はこの種の特徴である大根臭がある。消化しにくいので食用には適さないキノコである。

 

      カラシ臭のワカフサタケ、Hebeloma sinapizans(Paulet) Gillet は傘は黄土色がかった褐色、オオワカフサタケより大きく、湿気の多い森によく発生する。柄の基部はやや球根状、肉は同じく大根臭がある。このキノコも食用に適さない。

 

 

95 Hebeloma crustuliniforme

95-  Hebeloma crustuliniforme  Bull.    《1893年7月14日に描き直す》

解釈:Hebeloma crustuliniforme (Bull.) Quél.

【和名:オオワカフサタケ、ワカフサタケ属】

 

      この図版のキノコは柄の上部の粉状と傘の色が、ファ-ブルの同定を確にしている。ひだは前図のものと同じく、濃い色の染みがあり、それは乾燥時に採集されたことがわかる。

 

 

 

96 Helvella crispa_0001

96-  Helvella crispa        《1891年10月8日》

解釈:  Helvella crispa (Scop. : Fr.) Fr.   【縮れたノボリリュタケの意】

仏名: Oreille de chat     【猫の耳  の意】

【和名:ノボリリュウタケ、ノボリリュウタケ属】

 

      とてもきれいな図版のキノコは、傘は鞍形で、柄は陥落のある不規則な太い縦じわのあるノボリリュウタケである。稀少なものや問題のあるもの以外は、他の種と混同することはない。Helvella lacunosa【クロノボリリュウ】はノボリリュウタケと同じ容姿だが、全体が薫製されたような灰色である。Helvella sulcata の場合はクロノボリリュウより暗い色合である。図版に見られる全ての特徴がノボリリュウタケのものである:傘はクリーム色または黄土色で、柄は白色といった、他の Helvella 亜属の種と同じような太い縦じわがある。(作家によっては  Cyathipodia, Leptopodia, Paxina, Macroscyphus  などの属を亜属にする)。

      このキノコはヨーロッパでは良く見られ、北米でも知られている。地上性で林内や森の周辺部あるいは林道沿いに良く発生する。

      美味しいキノコとして知られているが、生食や70度以下で料理をすると他の多くの子嚢菌と同様 Gyromitra 属症候群の中毒の危険があるので避けた方がいい。

 

 

97 Hydnum Sarcodon imbricatus

97-Hydnum imbricatum

  《サランシュ【地名】1889年8月29日、径 0.2 m,針の長さ 1.2 cm

解釈:Sarcodon imbricatus (L. : Fr.) Karst. 1881年

【和名:シシタケ、コウタケ属】

      ファ-ブルが描いたこのキノコは、この種の典型的な特徴を有しているので一目でそれとわかった。好奇心から私の標本と比べて見ると、特に図版の左のものは、イタリアのチロルで1988年9月22日に私が採集したものを、ファ-ブルが描いたのではないかと思われるほど(ほとんどファ-ブルから一世紀後!)形ばかりでなく色までも全く同じなのには驚いてしまった。

      通常シシタケは頑丈で、若い子実体の傘は山形に膨らみ(最後には漏斗形)、特に表面の薄い色合いに濃褐色の鱗片は衝撃的である。その鱗片は厚く、かなり同心円的に広がり、中心部に近いほど大きくて、反り返り、縁部付近は小さく傘に密着する。縁部ははっきりと内に曲がる(ほとんど内巻き)。針は多少とも白っぽく、柄の上部に垂生する。

      ファ-ブルが図版に記した傘の径は 20 cmで、Bourdot & Galzin のものは 6~30 cmである。そして針の長さはファ-ブルのは若いキノコだと思われるが 1, 2 cm、しかし成長したものではその長さが時には10cmにも及ぶことがある!従って、これはシシタケの特徴が素晴らしく表現されている図版だと言えよう。

      このキノコの分布は全ヨーロッパ、アジア、北米。ヨーロッパでは至る所に見られ特に山岳部を好む。フランスでは地方によって多少異なる:西部とパリ地方では発生せず、北部は稀で、南部、中部、東部ではかなり頻繁に見られるキノコである。南から北に行くほど稀になり、オランダでは、1973年以降減少が著しく、1980年に入ってからは二つの島でしか見ることができない。

      シシタケは地上性で湿気を好み、針葉樹林(ヒマラヤスギ属、トウヒ属、マツ属)、カルスト台地、牧場、混合林、砂地や苔のある針葉樹林、山岳地帯や亜高山のトウヒの林内、シーダーの植林地などに発生する。

      肉は最初快い香りがあるが、のち厩舎のような不快な臭いがし、味は無味~やや苦い。若いときは美味しいキノコだが、成長したものは硬くて苦みも強くなる。スープやソースの香り付けとして、乾燥したものを粉にして用いる。

 

 

 

98 Hydnum repandum

98-Hydnum repandum    《サランシュ【地名】ブナ林、1889年8月16日》

解釈: Hydnum repandum  L. : Fr. var. repandum【はねかえった、波形の意】

仏名: Pied de mouton  【羊の足の意】

【和名:カノシタ、カノシタ属】

 

      ファ-ブルが同定したこの種名は問題はないが、この図版の美しい色のキノコは変種のvar. rufescens 【赤褐色になるの意】を想定させる(Hydnum rufescens L. : Fr. を正当な種と見なしている作家も何人かいる)。カノシタはさまざまな形態を有するが、ほとんどの作家が var. rufescens は基準種に比べるとより小さく、よりオレンジがかった赤褐色であることで一致している。

それに付け加えると、キノコ全体はあまり太くなく、傘は柄と区別しやすく、針は柄にほんの僅か垂生するだけである。この二分法による分類は典型的なキノコがある場合のみ有効であるが、自然はそれほど簡単ではなくrepandum rufescens の特徴を混ぜ合わせた中間的な多くのキノコを作った。この図版のキノコは傘の色が基準種より濃く、var. rufescens にしては薄すぎる。しかし他の特徴は基準種に一致するので、これは色の濃いカノシタの var. repandum 【変種】という見方が賢明だと思われる。Var. rufescens を種と見なす人は少数であり、ファ-ブルのこのキノコは品種を支持する側に味方するものである。

      カノシタの分布は北半球(ヨーロッパ、アジア、北米)やオーストラリア。ヨーロッパの全域でしばしば見られ、フランスではありふれたキノコである。

      針葉樹、広葉樹林内の地上に、土壌のpHに関係なく発生する。

      有名なキノコで、若いものだけが食用に適し、味は繊細で、ほとんど虫食いもなく、多くの料理に珍重されているが、肉は硬く、繊維質なので長く火を通さなければならない。