72 Cortinarius Emilii Nov Jean-Henri FABRE

72- Cortinarius Emilii Nob.

解釈: Cortinarius prasinus Schaeff. : Fr. 【ねぎ色フウセンタケの意】

【和名:なし、Orichalcei 節、オオカシワギタケ亜属、フウセンタケ属】

      この種は1774年に  Schaeffer によってたてられ、Fries に引き継がれた。Fries の1838年の記述によれば:傘の肉は充実、表面は粘質、変化に富んだ鱗片があり、黄色っぽく、煤色や赤銅色ではない。ひだはやや離生で、帯オリ-ブ黄色~黄緑色。柄は頑丈で硬く、短い、基部は有縁の球根があり、Cortinarius calochrous の様子を持ち、コルチナは薄緑色、傘の肉は白色で、柄の肉は緑色。

        Konrad & Maublanc による解釈のC.prasinus: 

  -傘は緑色、オリーブ黄色~《ねぎ色》、径は最大8cm、中心部はさび色~すす色がかった淡黄褐色。

  -ひだはかなり密、幅は広く、最初オリーブ~緑色がかった黄色、のちニッケイ色~オリーブ色がかった暗褐色。

  -柄はずんぐりして、黄緑色で傘より薄い色である。基部は有縁のレモン色の幅広い球根がある。コルチナは黄緑色のち胞子の成熟によりニッケイ色になる。

  -肉は白っぽく、ついで緑がかったレモン色になる。

 

Cortinarius Lange 86       Lange の解釈の C.prasinus は、もっと小型のキノコで、中心部は赤銅褐色 (Fries がはっきりと赤銅色を削除したことに気をつけたい)、ひだは黄緑色、柄は青緑色である。

Cortinarius prasinus Md 709

      ファ-ブルの水彩画に、Konrad & Maublanc が表現した《ねぎの青色》を認め、それはCooke, Marchand, Michael-Hennig の図版にも少し見られる。多数の作家の図版や記述によると、ひだが多少ともオリ-ブ色がかった黄色であるのに比べて、ファ-ブルのものは少し薄すぎるようだ。この淡い色がどれほど画家の目を逃れているか、Marchand の写真を見ればよくわかると思う。

      この図版の三本のキノコの柄は、Fries をはじめ多くの作家が記述しているように、頑丈でずんぐりしている。右端のは逆に、とても細いが...でもいいだろう、これはファ-ブルのいつものやり方だ!  Moser, Marchand, Boudier といった多くの作家が、このキノコの柄は黄色と記述しているので、ファ-ブルの淡い色というのは少々厄介である。しかし、本当を言えば、Lange や Michael-Hennig そして  Konrad & Maublanc   の図版の柄もとても淡い色である。

      球根に関しては、ファ-ブルははっきりとした縁を描いており、それはまったく好都合に鮮明な黄色で、Konrad & Maublanc が、球根はレモン色と言ってるではないか!メデタシ、メデタシ。従って、これは  Konrad & Maublanc のCortinarius prasinus とはっきり同定できる。Emilii はファ-ブルがこのキノコを同定できなかったので、新種だと思い、息子の Emile に因んで付けた名前で、もちろん有効ではないので使えない。


73 Cortinarius Emilianus , Refait 1er juin 1893 Jean-Henri FABRE

73- Cortinarius Emilianus    《1893年6月1日描き直す》

解釈: Cortinarius prasinus Schaeff. : Fr.

【和名:なし、Orichalcei 節、オオカシワギタケ亜属、フウセンタケ属

 

      この二枚目のCortinarius Emilianus は、全体の様子や色、ことに濃い緑色の傘は、まったく72番の図版のものと同じだと思われる。

      ここでは簡単に Konrad & Maublanc の C. prasinus の記述をしよう :

  -傘の径 5~8 cm、全体が緑色で、それも草の緑色~ねぎの緑色、中心部はしばしば褐色、あるいは褐色のしみが見られ、粘質、縁部は内側に巻く。

  -ひだは、若いときは淡い帯オリーブ黄緑色、成熟すると図版のようなさび色がかったニッケイ色になる。

  -柄は中実、短く太い、黄緑色で縁のある大きなレモン色の球根を有す。

  -肉は白っぽくやがて緑がかったレモン色。


 

74 Cortinarius miniatus rufoolivaceus74-  Cortinarius miniatus Nob.

解釈:Cortinarius rufoolivaceus (Pers. : Fr.) Fr.

【和名:なし、Orichalcei 節、オオカシワギタケ亜属、フウセンタケ属】

 

      ファ-ブルの才能がこの素晴らしいCortinarius rufoolivaceus を私達に描いてくれた。

      この頑丈なキノコの傘は、5~10 cm ときには12 cm にも及ぶ、最初ゆるやかなまんじゅう形のち平らになる。図版の右上のキノコにはっきり見られるように、縁部は長い間内に巻いている。傘の表皮は簡単に全部が剥取られ、粘質、ふつう無毛で光沢があり、極縁部はしばしばひだを超える。傘の中心部は赤っぽく、れんが色、赤銅色であり、縁部はリラ色がかるがだんだん色褪せる。

      ひだは密で幅広く、きれいなオリ-ブ色である。この図版のすべてのキノコは若くて新鮮なものばかりである。成熟すると胞子紋はさび色がかったニッケイ色になり、ひだのオリ-ブ色を隠してしまう。

      柄は頑丈で、3~8 × 1~2 cm、硬く、中実、乾性、柔らかい光沢があり、紫色がかるが、上部はそれよりもっと濃い。基部は 2.5~3 cm の球根が、くっきりとした、あるいはゆるやかな縁を有し、ファ-ブルの図版に見られるように、きれいな赤色がかった桃色である。

      傘と柄の肉はかなり厚く、クリーム色がかった白色~レモン色がかった白色。球根の肉は桃色~リラ色がかった白色である。この素晴らしいキノコは、肉は苦くて不愉快な臭いがあるので食用には適さない。

      ファ-ブルは採集の日時と場所を記さなかった。Cortinarius rufoolivaceus は普通秋に広葉樹林の石灰土に発生する。ファ-ブルは  Cortinarius miniatus 【丹紅色、朱色の意】という名前を付けた。彼は球根のきれいな赤い縁に魅せられたのだろうか? C. miniatus という名前は、現在では菌学の文学には見ることができない。私達は躊躇なくこの素晴らしい図版のキノコを、Cortinarius rufoolivaceus (Pers. 1801年 : Fr. 1821年) Fr. 1838年と呼ぼう。そればかりではなく、ファ-ブルのこの図版は Bresadola のものに比肩すべく、この種をよく表わしている最高の図版の一つといえるだろう。

Cortinarius rufoolivaceus (B M-L &R)

Cortinarius rufoolivaceus (B R M-L 49)

Cortinarius rufoolivaceus (Cetto 949)

Cortinarius rufoolivaceus v pallidus (Cetto 1380)

Cortinarius rufoolivaceus (Marchand 711)


 

 

75 Cortinarius fulgens

75- Cortinarius fulgens   《サランシュ【地名】-1890年9月10日、モミの木》

 解釈:難しく、不確か

 【和名:なし、コガネフウセンタケ節、オオカシワギタケ亜属、フウセンタケ属】

 

      この図版の頑丈なキノコは、傘は肉厚で、中高、縁部はながい間内に巻き、表面はクリ色で縁部が僅かに薄い色。ひだはやや密、傘より薄い色だが、すでに少しさび色がかっている。柄はずんぐりしていて、白っぽく、ほんのわずかコルチナが見られ、下部には広い縁があり、基部は細まって根状となる。

断面図がないのが残念!それは同定に大変重要な肉の色の情報を取り上げられたに等しい。

      そんな訳で我々には推定しかないので、とくに慎重でなければならない。ことに、C. fulgens の名前で大量の解釈が秘められており、以下に見られるように、初期の記述はたいへん曖昧なものであった :

    -Fries の C. fulgens は、傘は肉厚で平たく、直径6~9cm、表面は粘質のち絹のような微繊維におおわれている。ひだは湾生、最初黄色のち鉄さび色になる。柄は頑丈で黄色(ファ-ブルはこの色をなおざりにしたか?)、有縁の球根を有する(この点はなにも言うことがない!)。Fries はファ-ブルと同じように、このキノコを針葉樹林で採集している。

    -ファ-ブルは  Quélet の本をよく用いた。その Quélet は Fries と同じく(傘は肉厚で、直径  6~9cm)の表現を使ったが、オレンジ-黄褐色と小斑点を付け加えた。それが Orton の  C. subfulgens の方に、あるいは Henry が1977年に Quélet の解釈の fulgens を類別した  C. regis-romae の方に我々の関心を向かわせた。Quélet の C. fulgens のひだは、最初鮮やかな黄色、のち黄褐色かさび色になる。柄は黄色(いつも!)。有縁の球根はしばしば斜めに傾いており、この図版の二つの大きいキノコが少しそれに該当する。肉は充実し、黄白色のち黄土色。Quélet もこのキノコをモミの木の下で採集している。

      1951年の Henry の C. fulgens の見事な研究は相当な数の解釈を示してくれた。たとえば、Konrad & Maublanc の C. fulgens の傘はどちらかと言えばクリ色をしており、C. fulmineus の名前で次のように記述している:《この Scauri 群の大型のキノコは、淡黄褐色がかった黄色で、C. fulgens にとても近く、多くの作家がこのキノコを C. fulgens の変種とした。我々は黄褐色-褐色の傘によってそれと認めることができる!》

      結局、クリ色の傘や白っぽい柄だけでこの図版に C. fulgens の名前を付けることはできない。しかし、ファ-ブルのキノコはその全体の様子から Fries の C. fulgens に遠くないと思われる。疑わしきは罰せずの法則で、我々はファ-ブルの C. fulgens を、とてもクリ色がかった淡黄褐色、そして Moser の C. fulmineus のようにオレンジ色を欠くと言う特別の解釈で、 fulgens の名前のままにして置こう。しかしながら、別の解釈が本当に待たれるものである。

 

76 Cortinarius fulgens subfulgens

76-  Cortinarius fulgens    《1888年11月18日》

解釈:不確か  Cotinarius subfulgens Orton ss. Moser?

【和名:なし、コガネフウセンタケ節、オオカシワギタケ亜属、フウセンタケ属】

 

      75番の図版でファ-ブルが C. fulgens と呼んだ名前は Fries 以来しばしば別のキノコに使われてきた。従って、現代の作家はその名前を避けて、新しい名前の subfulgenseufulmineus, cereifolius, fulmineus などを使っている。

      この図版の特徴を掲げてみると、傘の肉はやや厚く、表面は黄色、全面ほとんど平滑で中心部には鱗片が見られない。ひだはかなり密、最初はたぶん黄色だったと思うが、さび色になり初めている。柄は黄色、あまり頑丈ではなく、基部には有縁の赤褐色の小さな球根がある。

      以上の観察から、それは Moser の図版のキノコに相当すると思われ、彼は次のように記述している:

  -傘は径10~15cm,金色がかったオレンジ黄色,のちオレンジ赤褐色、縁部はふつう鮮やかな黄色である(この特徴はファ-ブルの図版にも見られる)。

  -ひだは最初クロ-ム黄色だが、のちさび色がかった黄土色になる。

  -柄の上部は初め白っぽく、基部は薄い黄土色。

      C. fulgens として、多くのオレンジ黄色(傘、ひだ、柄、肉)ではっきりと縁のある球根を有する種が、同じ名前で呼ばれてきた。現在では胞子の大きさや形によってそれらを区別することができるが、ファ-ブルのキノコの生育状態が不明である以上、彼がこの名前を使ったからといって非難することはできない。結局、ファ-ブルの図版と現代作家  Moser  の  C.subfulgens  1960年  あるいは  Michaël-Hennig の  C. fulmineus との酷似する図版の間で、私達は思案の末  Moser の C. subfulgens Orton の方を選んだ。

 

77 Cortinarius turbinatus atrovirens

77-Cortinarius turbinatus  《1891年11月14日》

解釈:不確か C. turbinatus ss. Kalchbr. 1874 ?

  【和名:なし、Orichalcei 節、オオカシワギタケ亜属、フウセンタケ属】

 

      このすばらしい図版にどうして  Cortinarius turbinatus という名前を付けたのだろうか?

      1782年に Bulliard がこの種を簡単に記しているが、のち Fries が引き継ぎ、つぎのように記述している:  C. turbinatus の傘は肉が厚く、平らで中心がくぼみ、平滑、粘質、やや  hygrophane 【水分の蒸発による褪色と透明度の消失】つまり、乾いている時は全体が黄色、のち褪色し、水分の多い時はやや緑がかっている。ひだは上生-直生、密、全縁、汚れた淡黄色のち鉄さび色。柄はほとんど上下同大、光沢のある白色で、基部には独楽状の球根がある。そして肉は白色。

      Moser は  問題のある Fries の C. turbinatus については.多くを語っていないが、C. turbinatus ss. Ricken は C. talus Fr. だという解釈で、Multiformes群【マンジュウガサ群】に入れた。この群の特徴は、ひだの色は薄く、緑色や鮮やかな黄色に欠ける。

      Henry は長い研究の末、多くの中から取捨選択し、少なくとも六つの解釈に区別した。その主な点を次に掲げると:

  -C. turbinatus ss. Rea の傘は汚れた黄色、ひだは淡い黄色、柄は傘と同じ色だが,時には上部が紫色がかることがあり、基部は有縁の球根状で柄に接する部分が凹む。

  -C. turbinatus ss. Bataille や Henry の傘は黄土色がかった黄色、ひだは長い間クリ-ム色、柄は灰色がかった白色のち黄変し、基部は有縁の球根を有する(時にはその直径が傘と同じくらい!)。肉の色は真っ白。

  -C. turbinatus ss. Velenovsky の傘は、肌色がかった褐色~はしばみ色がかったすす色、ひだは白っぽく、柄は白色。

  -C. turbinatus ss. Cooke の傘は、ほとんど無色(!)色褪せた黄色~鉄さび色がかった淡黄褐色、ひだは最初汚れた淡黄色。

  -C. turbinatus ss. Ricken の傘は、乾燥時の黄色から、湿気の多い時期には緑色までの色合いがある。

  -C. turbinatus ss. Boudier の傘は、すす色がかった淡黄褐色、ひだは黄土色(時には黒っぽい紫色!)、柄の上部はときに紫色がかる。

      以上の六つの解釈のうちで、たった一つ Ricken のものが(湿気の多い時期には緑色までの色合いがある)僅かにファ-ブルの図版に近いと言える。しかし、Moser は既にこの問題を解決している。それは  C. talus (Multiformes 群) と呼ばれ、Ricken の39-3の図版を見れば即座に、ファ-ブルのキノコが  Cortinarius turbinatus ではないことがわかる。しかしそれでは?

      しばしば断面図を示してくれるファ-ブルが、このたびはそれを忘れるなんて、非常に残念である。それに私達は、本当に肉の色も知りたかった。白色だったのかな、それともはっきりした黄色だったのか、あるいはまったく別の色?何処に生えていたのだろう?(モミの木の近く?)もしそうならば、私達は Cortinarius atrovirens にとても気をそそられる。そのキノコの特徴は:

  -傘は肉が厚く、オリーブ色だが、中心部はもっと濃く黒っぽくさえあり、縁部は緑色からレモン黄色までの間の色合いがある。

  -ひだは硫黄色~鮮やかなクロ-ム黄色~オリ-ブ色がかった黄色。

  -柄は頑丈、鮮やかな硫黄色~クロ-ム黄色~オリ-ブ色がかった黄色、基部にはレモン色のこま状の球根を有す。

  -肉はレモン色(断面図があれば同定の大きな助けとなったのに!)。

      ファ-ブルの図版の球根は黄色がかっているが、それでも白っぽ過ぎることを除くと、やはり  Cortinarius atrovirens Kalchbr. 1874年が妥当だと思われる。