63 Coprinus comatus 132

63 - Coprinus comatus   《1886年4月10日、1892年8月描き直す》

解釈: Coprinus comatus (Moeller: Fr.) Pers.
仏名: Coprin chevelu,プロヴァンス語で 《Pisso-Chin》

【和名:ササクレヒトヨタケ、ササクレヒトヨ節】

      この図版は、ササクレヒトヨタケの特徴である、傘とひだが黒く液化していく迄の各成長過程がよく表わされている。柄のかなり低い所に膜質のつばがあり、傘は最初は円筒形のち鐘形、表面は灰色がかった小鱗片におおわれる、といった特徴が見事に描写されている。      

      夏と秋、豊かな腐植土層、畑、庭、沿道に、しばしば小さな群れで発生し、かなり頻繁に見られるキノコである。

      味は繊細だが、若いつぼみだけが食用になり、傘の縁部が黒くなる以前の、採集後わずか数時間のもの以外は、食すると気分が悪くなる。 このキノコの栽培は、ツクリタケと同じく、堆肥を使うことが可能であるが、その商業化は、短期間に完全な状態で消費者まで届ける、といった固有の難しさを抱えている。

 


 

64 Coprinus atramentarius 23 9bre 1890 Planche n°131

64 -  Coprinus atramentarius       1890年9月23日

 解釈: Coprinus atramentarius (Bull. : Fr.) Fr. 【黒い液のヒトヨタケの意】
仏名: Coprin noir d'encre, Coprin-encrier, Coprin goutte-d'encre 【黒インク、インクつぼ、インクの滴ヒトヨタケの意】
【和名:ヒトヨタケ】

      ファ-ブルのこのキノコの同定に疑問は全然ない。同義語を持たない珍しい種の一つで、その特徴がはっきりと表わされている:傘は径3~6cm、初め卵形でのち鐘形か円錘形、白色、中心部は帯褐色の細かい鱗片が付着し、成長にしたがいますます濃色になる。

      柄は 8-16 × 0,7-1,5 cm、円筒形、白色、平滑、中空で、下部の特定の位置には、このキノコがまだつぼみの頃傘が付着していた痕跡が見られる。ひだは密で、初め白色、しだいに黒褐色、ついには黒いインク状となる。黒インクヒトヨタケの名前の由来である。Bulliard 氏は18世紀に初めて彼の Herbier de France 【フランスの植物標本】のなかで次のように書いている:《老いると溶けて茶褐色がかった黒色の液体になる。この液体に少々の水を加え、かびないように、丁字のつぼみを乾燥させたものと一緒に煮詰め、それを漉すと、黄褐色のインクができる。それは淡彩画やペン書きにとても具合がよい...》

      Dumée によれば、Boudier 氏が1876年にフランス植物学会誌に数ペ-ジの文章を委ねたが、それは約7年前にヒトヨタケのインクで書かれたものである。

      このキノコは春先から秋まで芝生や庭、沿道に束生し、ほとんどのヨ-ロッパと北米全土に見られる。

      食用であることがつとに知られているキノコだが、アルコ-ル類と一緒に何回か食べると、一過性ではあるが顔が紅潮する。この症状は1916年にロ-ヌ県の  Chifflot 氏によって初めて公表された。1917年に、Pierre 氏も同じ検証をド-ブ県でしている。また Pomerleau 氏によって、カナダとアメリカ合衆国でも同じ所見が述べられている。このキノコに含まれている毒性物質は、コプリンといって、これは熱を加えることで形成されるようだ。コプリンがアルコ-ル飲料と一緒になって、初期の中毒症状である、軽い血圧の上昇、頻拍、一過性の顔面紅潮と共に、しばしば猛烈な頭痛に見舞われる。この症状は約15分くらい続き、大量の発汗や嘔吐を伴い、時には意識を失うことさえある。

      この中毒症状は、アルコ-ル類を飲用していなければ、全く起こらないことが確認されており、Heim 氏によれば、このキノコと同じような中毒物質《二硫化炭素や  ディエティラミン  の派生物が  antabuse, abstinyl, refusal, aversa などの名前で、特に、スカンジナビアでは、アルコ-ル中毒患者の治療薬として使われている。強いアルコ-ルの中毒者が、心ならずもこの物質を飲んだあと、もう酒類に近ずくのも嫌だったという》。

 


 

65 Coprinus deliquescens Bull 15 9bre 1888 Planche n°134

65 -  Coprinus deliquescens Bull.      《1886年9月15日》

 解釈:Coprinus micaceus (Bull. : Fr.) Fr.(1836年)
【和名:キララタケ】

    この図版を検討した結果,このヒトヨタケは  Sect. Micacei 【キララタケ節】に属すると思われる。更に細かく同定していくと、ますます難しくなり、間違いのおそれも大きくなる。したがって、傘には外被膜がまったく残っておらず、柄には剛毛が見当たらず(存在しなかったか、あるいは描き忘れか?)、そのうえとても重要な、被膜や胞子の顕微鏡的特徴の検査が全く不可能なので、推定を重ねていかなければならない。

      傘の色はかなり濃く、赤褐色の菌糸体の不在(しかし赤褐色の菌糸体の存在だけでは不十分で、中には、菌糸体を有しているにもかかわらず、ほとんど見うけられない種がある)、同定をより正確にするために、何とも説明が付きにくいので全体の様子からというしかないが、Coprinus saccharinus, C. truncorum, C. micaceus の方面を研究することにした。実際には  C. saccharinus は真っ白な被膜によって簡単に判別できるが、この図版からは何とも言えない。C. truncorumC. micaceus を識別するのは、顕微鏡の検査なしにはとても難しい。なぜならこのふたつのキノコの外観的特徴は酷似しており、  C.micaceus  には柄に剛毛があり、目でみつけることはできないが、性能の良いル-ペでは明らかに見られる。しかしながら、キララタケはヨ-ロッパではいたるところに発生し、北米にも見られ、フランスではきわめてありふれたキノコなので、この図版はキララタケ節の基準種の C. micaceus だと思われる。

      このキノコは材上生の死物寄生菌で、朽ち木か埋れ木に発生し、森、林、畑、庭、湿った野道や炭鉱のぼた山にさえも見られる。

      普通このキノコは無害であるが、アルコ-ルと一緒に食すると、心悸抗進などの軽い身体の不調を引き起こす(ヒトヨタケ症候群)。いずれにしても、このキノコは食用に適しない。胞子は抗原を作る疑いがあり、過敏な人ではぜんそく性の兆候が見られることもある。

 


 

66 Coprinus fimetarius Planche n°135

66- Coprinus fimetarius    【堆肥の山のヒトヨタケの意】

解釈、不確か: Coprinus cinereus (Schaeff. : Fr.) S. F. Gray ? 【灰色ヒトヨタケの意】
異名: Coprinus fimetarius (L.) Fr.
【和名: ウシグソヒトヨタケ】

      ファ-ブルのキノコに Coprinus cinereus  という解釈をしたのは、それ以外の適当な名前を見つけることができなかったからである。しかしこの解釈は明らかではないので、慎重を期することは言うまでもない。まず、このキノコには被膜がほとんどなく、逆説的なのは、4本の成長した子実体には白色の小さな斑点が見られるのに、4本の幼菌にはそれがまったくない!次に、ふつうは根状であるはずの柄の部分にそれが見られない。しかしこれは、ファ-ブルの絵に土が描かれていることから見て、地中の柄の部分は描かなかったことが容易に理解できる。

      この種は、ヨ-ロッパやフランスのかなりの地域で頻繁に見られるというが、北部では珍しい。

      これは好糞性の腐生菌で、冷たい堆肥や、時間のたった糞便、堆肥土、腐った藁や林道沿いに発生する。食用です!

 


67_Coprinus_fimetarius_cinereus67 - Coprinus fimetarius   【堆肥の山のヒトヨタケの意】  《林道沿い、1891年10月21日》

解釈、不確か: Coprinus cinereus (Schaeff. : Fr.) S. F. Gray ?
【和名: ウシグソヒトヨタケ】

      またもや解釈が難しいキノコである。柄の一部が、地中に隠れているのではないかという疑問は、66番の図版のものと同じである。逆に、ここでは傘の被膜は十分豊かであるが、幼菌にはその被膜が欠けていると文句をいうことができない(幼菌が描かれていない!)。しかし、全体の薄い色合いと卵形の様子から、焼け跡に発生する種である  Coprinus gonophyllus ヤケノヒメヒトヨタケ】を思わせるが、ファ-ブルは生育地についての詳細は記していない。顕微鏡による検査が不可能である以上、ファ-ブルの同定に任せるしかない。

 


 

68 Coprinus sterquilinus Fries, Refait 6 juillet 1893, Planche n°138

68-  Coprinus sterquilinus Fr.      1893年7月6日描き直

解釈:Coprinus sterquilinus Fr.  【糞生性のヒトヨタケの意】
【和名:マグソヒトヨタケ、ササクレヒトヨタケ節】

      このかわいらしい種の特徴をファ-ブルはよく表わしている。傘の表面が特にササクレヒトヨタケによく似ているのがわかる(マグソヒトヨタケはササクレヒトヨタケの小型化したものではないのかな!)。柄の下部にあるつぼのようなものはつばで、それは可動性あるいは柄の基部に固定される。ファ-ブルの図版からは、傘が裂開し、一枚のひだがたてに二つに裂け、開いた雨傘状で、黒色の成熟した胞子や小さな《根》がはっきりと窺える。それにひだが液化していくのに立ち合っているようである。

      フランスではかなり珍しいキノコで、古い堆肥や発酵中の暖かい堆肥、糞便、庭などに発生する。