184-187 Russula integra ss. Fabre ファ-ブルのヨヘイジ
184- Russula integra Linné
185- Russula integra 《1893年8月30日描き直す》
186- Russula integra 《1892年9月4日》
184 - 187 Russula integra 解釈:不確か
ファ -ブルは、ほとんど同じ外観や色合いのこれら四枚の図版すべてを R. integra (L.) Fr.【ヨヘイジ】としている。図版185は184を描き直したものと思われる。
図版186以外のキノコには、褐色の色合いが 見られず、カ-ミンや帯紫灰色の二つの色は、混ざり合うことなくそれぞれ単一の色で描かれている。
し かし Integrinae 節では多くの色が混然としているのが普通である。当時の R. fusca Quél.は現代解釈では多くの学者が R. integra としており、傘は褐色~黄褐色である。また f.purpurella Sing.は濃い紫色~赤紫色,f. grisella Sing.は灰色、また f. pseudoolivascens (Sing.) Bon は緑色がかっている。
Quélet の記述によれば R. integra の傘は赤紫色、赤色、赤褐色、褐色の各色にオリーブ色が混ざった色合いであるが、ファ-ブルの図版には緑色や褐色が見られない。その上、図版187の柄に ははっきりと赤い染みが見られるが、この特徴も R. integra には珍しいことである。
ファ -ブルがこれらのキノコを R. integra と同定したのは、間違いなく肉には辛味がなかったからだと思われる。しかし肉に辛味がなく、胞子紋が黄色の種は他にたくさんあり、いずれも顕微鏡的特徴の 検査なしには確かなことは言えない。図版の赤いキノコだけを見ると、まったく R. pseudointegra Arn. & Gor.であるが、通常この種の肉はかなり辛く、地中海地方では知られていないキノコである。その上図版のもう一方の傘が帯紫灰色のキノコもこれまた問題 である。
Viridantinae 節【ニオイベニハツなど】の種は、ひだが明らかに淡い色合いなので排除できる。
ま た R. integra と R. romellii Maire 以外の他のIntegrinae や Integroidinae 節の種には、傘が図版のようにはっきりとした色合のものは少なく、また地中海地方では珍しいキノコである。しかし、R. romellii の傘が赤色というのは珍しく、通常見られる主な色調は緑色である。
もう一つの可能性は Olivaceinae 節【クサイロアカネタケなど】の特に R. alutacea (Pers. : Fr.) Fr.である。しかし以前は数種のキノコがこの同じ学名で呼ばれており、Quélet でさえ R. integra は 《 R. alutacea に似ている》と記しているところから、いくつかの可能性が考えられる。
Olivaceinae 節の種は地中海地方ではかなり普通に見られるが、文字どおりオリーブ緑色が主な色調であるところから図版のキノコとは異なる。R. vinosobrunnea (Bres.) Romagn.でさえも傘はオリーブ色や褐色であり、近種の R. paraolivacea Bon は秋に地中海地方、特にコルシカ島、ポルクロール島などでかなり普通に見られる大型のキノコで、胞子紋は鮮黄色、柄は下部がやや膨らみ、しばしば桃色の染 みが見られる。傘はファ-ブルの四枚の図版に近い赤色で、しばしば褪色しているかまたはくすんだ紫色、時には淡紫色である。傘の表面には Olivaceinae 節の他のどの種よりもはっきりとした同心円状の微細なひびわれが見られることから、同時に条結局、現在あるいは以前の解釈を当てはめても、図版のキノコが R. integra だと断定できるどのような確証も得るこはできなかった。
Christian Dagron (SMF)